2016年02月06日
プロジェクト管理と日常生活 No.422 『東芝の不正会計にみる監査法人の定期検査運用のあり方』

以前、プロジェクト管理と日常生活 No.413 『東芝の不正会計にみるプロセス管理の重要性』で企業活動におけるプロセス管理の重要性についてお伝えしました。

しかし、企業活動の健全性をチェックする最後の砦とも言える東芝の監査法人にも問題のあったことが発覚しました。

そこで、今回は東芝の不正会計にみる監査法人の定期検査運用のあり方についてお伝えします。

 

まず、以下に毎日新聞12月27日()付けのネットニュースからの情報をご紹介します。

昨年12月15日、公認会計士の世界に衝撃のニュースが走りました。

東芝を監査した「新日本監査法人」について、金融庁の公認会計士・監査審査会が「運営が著しく不当だった」と厳しく断じる検査結果を公表し、同日、同法人を行政処分するよう金融庁に勧告したといいます。

 

新日本監査法人は、公認会計士約3500人を擁する国内最大手の監査法人です。

社員の多くが、司法試験と同レベルの難関国家試験に合格した公認会計士という専門家集団です。

 

監査審査会はこれまで2年に1度、新日本監査法人の定期検査を行ってきました。

そうした過去の検査で、企業に対する監査計画の立案や手続きの不備を繰り返し指摘してきたといいます。

ところが、東芝不正会計を受けた今回の検査で、過去に指摘された改善策を周知徹底しておらず、改善状況を検証する態勢も構築していなかった、と指摘されたのです。

具体的には、東芝の見積もりや事業見通しをうのみにし、批判的に検討しなかったと指摘したのです。

 

なお、新日本監査法人は、2011年に損失隠しが発覚したオリンパスの監査も担当しており、この時も金融庁から業務改善命令を受けていました。

 

以上、毎日新聞12月27日()付けのネットニュースからの情報をご紹介しましたが、ここから見えてくるのは、現行の金融庁の公認会計士・監査審査会による監査法人の定期検査を巡る不備です。

その不備について、これまでの経緯、問題点、および定期検査のあり方について以下にまとめてみました。

(これまでの経緯)

・金融庁の公認会計士・監査審査会はこれまで2年に1度、新日本監査法人の定期検査を行ってきた

・そうした過去の検査で、企業に対する監査計画の立案や手続きの不備を繰り返し指摘してきた

・ところが、東芝不正会計を受けた今回の検査で、過去に指摘された改善策を周知徹底しておらず、改善状況を検証する態勢も構築していなかった

・新日本監査法人は、2011年に損失隠しが発覚したオリンパスの監査も担当しており、この時も金融庁から業務改善命令を受けていた

 

(問題点)

・新日本監査法人は、担当する複数の企業の監査において改善命令を受けていたにも関わらず、適切な対応をしてこなかった

・こうした新日本監査法人の不適切な対応に対して、結果としてこれまで放置されてきた

 

(監査法人の定期検査運用のあり方)

・国は、金融庁の公認会計士・監査審査会が監査法人に対して実施する定期検査に関する罰則規定の見直しを行うこと (無ければ、新たに策定すること)

・監査審査会は監査法人に対する定期検査で指摘した問題点を重要度に応じて層別すること

・層別された問題点の中で監査法人の担当する企業の活動の健全性に与える影響度合いに応じて解決策の検討期限を決めること

・監査審査会は監査法人による解決策の実施状況の進捗を管理し、罰則規定に従い、監査法人に対して一定期間事業停止などを命じるとともに、この事実を公開すること

 

要するに、監査法人の定期検査は定期的な運用はされてきたのですが、その狙いに対する実効性が欠けていたのです。

ですから、監査法人の定期検査運用のあり方として、定期検査で指摘された問題点に対し適切な対応が取られなかった監査法人に対しては厳正な罰則を与えるという仕組みを導入することです。

 

なぜ、今までこのような取り組みがされてこなかったのかとても不思議でなりません。

冒頭にお伝えしたように、新日本監査法人では、社員の多くは司法試験と同レベルの難関国家試験に合格した公認会計士という専門家集団なのです。

そうした一見したところ優れた監査法人が長らく複数企業の不正行為を見過ごしてきたのです。

今や日本3大監査法人の一角を占めるまでになった巨大法人、新日本監査法人もかつては監査を請け負う企業からの信頼が厚かったからこそ今日の業界での地位に着くことが出来たのです。

ですから、いかに組織としての健全性を維持することが難しいかということが今回の事例からも分かります。

やはり、特に監査を行うような立場の企業、あるいは監査人はあくまでも“性悪説”に立って厳しくチェックすることが求められるのです。

“性善説”に立った監査では実効性が期待出来ず、監査をする意味がないのです。

監査をやるだけお金と時間の無駄なのです。

 

もし、こうした仕組みが確立されていれば、今回のような不正会計に対して早期に適切な対策が実施されていたはずです。

 

今、東芝では自己資本が一気に6割も減少するという経営危機に直面しているといいます。

そうした中、家電部門と本社部門で早期退職の募集を中心に約7800人を削減し、2015年度の削減規模を1万600人とする大規模なリストラ策が進んでいるといいます。

経営陣の不正行為によりリストラされる社員からしてみれば、こうした状況はたまったものではありません。

 

こうした影響を考えると、東芝の経営陣による会計の不正行為、東芝の監査法人である新日本監査法人の不適切な監査、そして金融庁の監督不十分に対する責任は重大と言えます。

早急な再発防止策が求められます。


 
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