2016年02月02日
アイデアよもやま話 No.3302 廃炉時代の到来 その2 参考にすべきアメリカの対応策!

先週、行き場を失った原発事故のゴミについて3回にわたってお伝えしてきました。

そうした中、1月26日(火)放送の「クローズアップ現代」(NHK総合テレビ)で廃炉に関する積み残された課題について取り上げていたので2回にわたってご紹介します。

2回目は、参考にすべきアメリカの対応策についてです。

 

前回は、先送りされ続けられてきた結果、遅々として進まない廃炉作業の状況についてお伝えしました。

そこで、日本がこうした取り組みの参考にしているのがアメリカです。

廃炉を進めるうえで、政府が重要な役割を果たしています。

世界に先駆けて原発の解体を進めてきたアメリカでは、電力会社だけでなく廃炉専門業者が解体を担うなどして、既に10基の廃炉が完了しています。

 

日本で問題になっている廃炉の処分場の確保が出来たため、廃炉が進みました。

その大きな要因は、電力会社ではなく行政が深く関与する仕組みを整えたことでした。

30年前に定められた低レベル放射性廃棄物の処分場に対する法律では、州政府が責任を持って処分場を確保することになりました。

確保出来ない場合には、多額の課徴金が課せられます。

その結果、州政府や民間企業が所有する処分場が4ヶ所確保されました。

その一つ、ユタ州にあるクライブ処分場では、日本のL3に相当する放射性廃棄物を全米から受け入れています。

東京ドーム55個分の膨大な敷地に地下水などの監視設備を170ヵ所設置、100年間管理することを条件に操業の許可を得ています。

 

廃炉が進む中で起こり得る問題にも政府が対処する仕組みを整えています。

一昨年廃炉が決まったバーモントヤンキー原発では、シェールガスとの競争の激化や安全対策への投資がかさんだことで予定よりも20年早く廃炉を決定しました。

その結果、問題となったのが廃炉の費用です。

900億円あまりと見積もられている費用に対し、200億円以上不足している状況に陥りました。

廃炉費用は原発の運転開始時に見積もられ、毎年積み立てられます。

この制度は日本でも取り入れられています。

しかし、運転時間が短くなったことで積立期間が不足し、十分な資金が貯まっていないのです。

そこで電力会社はおよそ40年間廃炉を進めず、この間に資金を運用して増やす計画を発表しました。

これに対し、政府は電力会社任せにせず、アメリカ原子力規制委員会が資金を毎年チェックし、必要に応じて改善命令を出すことにしています。

アメリカ原子力規制委員会は、もし廃炉のための十分な資金がないと判断した場合、資金を追加したり、融資を受けたりするように命令します。

 

アメリカの制度の中で、日本で参考にすべき点について、元原子力委員で長崎大学教授の鈴木 達治郎さんは、一番大きいのは住民や国民の信頼を得るために以下の3つのポイントで国の関与が必要であることを挙げております。

・当事者以外が責任

  廃棄物処分を推進している機関ではないところ、すなわち州政府などが立地や事業の責任を負うこと

  日本で言えば、経産省や電気事業者ではないところに立地の責任を負わせること

・住民との情報共有

  原子力規制委員会や電気事業者以外がホストになり、住民も含めて全員が揃って情報共有出来るところがあること

・第三者機関がチェック

  日本では経産省がチェックしているが、第三者機関がチェックすることにより信頼性が高まること

 

これら3つについて、日本では未だ何も出来ていないと鈴木さんは指摘されております。

なお、第三者機関によるチェックについては、大国アメリカだけでなく、フィンランドやスウェーデンやスイスというような小規模な国でも実施されているので、小規模な国だから出来ないということはないといいます。

 

番組の最後に、原発が建設されてから50年経とうとしている中で、処分場については先送りが続いていることについて、鈴木さんは、次のようにおっしゃっています。

「原子力規制委員会をやっている時にも痛感したんですが、国の責任と民間の責任の境目がはっきりしてないんですね。」

「で、都合のいい時には国の責任であり、都合の悪い時には民間の責任である、で誰も責任を取らないような仕組みになってしまっているので、ここはしっかりとですね、今回の信頼を得るためにも国の関与をという意味では責任を明確にすること、民間で出来ないことは国がやること、事業者の責任はここまでっていうのをはっきりすることが必要だと思うんですね。」

「(国策で民営でやってきたという国谷キャスターの指摘に対して)、そうですね、そこの曖昧さが今一番問われていると思います。」

 

住民や国民の信頼を得るために国の関与が必要とされる3つのポイントについて、日本では未だ何も出来ていないと元原子力委員である鈴木さんが指摘されておられる状況の中で、原発再稼働が進みつつあります。

九州電力による昨年の川内原発(鹿児島県)2基の再稼働に引き続き、関西電力は1月29日に高浜原発3号機(福井県高浜町)を再稼働しました。

 

このまま他の原発の再稼働も進んでいけば、それだけ処分場未定のまま放射能廃棄物がどんどん増え続けていきます。

こうした状況がいずれ破たんすることは誰の目にも明らかです。

 

ということで、政府には早急にアメリカやフィンランドなどの対応策を参考にしつつ、これまでの消極的かつ曖昧な対応から脱却し、本来果たすべき政府の役割を明確にし、実行に移していただきたいと思います。


 
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