今年4月から始まる電力の小売り自由化に向け、電力関連ビジネスが加速しています。
そうした中、昨年11月9日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でバイオマス発電について取り上げていたのでご紹介します。
石油会社大手の昭和シェル石油の子会社が運営する、バイオマスを燃料とする国内最大規模の京浜バイオマス発電所(神奈川県川崎市川崎区)が昨年11月2日に稼働し、昨年11月9日に報道陣に公開されました。
京浜バイオマス発電所の発電能力は4万9000kwで、昭和シェル石油のメガソーラー16基分を超える規模といいます。
昭和シェル石油の柳生田 稔執行役員は、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「太陽光は一気に増えてしまったところがあって、太陽光は抑制してバイオマス、地熱、風力などを増やしたい資源エネルギー庁の意向を感じられます。」
こちらの木質バイオマス発電の仕組みは、廃材など有機物のゴミを燃焼させ、発生した熱でタービンを回して発電するものです。
CO2は排出しますが、植物が成長過程でCO2を吸収しているため、石油や石炭を使った火力発電より環境負荷は少ないと言えます。
なお、こちらで使われる燃料は、木材のおが屑などを固めたペレットで、北米から輸入しているといいます。
更に、東南アジアから仕入れたパームヤシの殻も燃料にしているといいます。
太陽光と同じようにバイオマスにも再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)が適用されます。
太陽光の買い取り価格は当初の48円/kwhから27円/kwh(2015年)へと下がってきているのに対して、木質バイオマスは当初から24円/kwh(2015年)と一定です。
なお、政府としては木質バイオマス発電を国内の林業振興に結び付けたいという意向があります。
また、国産材を使う場合には、以下のように買い取り価格を高く設定しています。
・発電量2000kw未満: 40円+税
・発電量2000kw以上: 32円+税
それでも、京浜バイオマス発電所が輸入してでも海外から木質バイオマスを取り寄せる理由は、遠く離れた山林から廃材を運搬してくるにはコストが見合わないところにありました。
一方、廃材として提供する側のかが森林組合(石川県小松市)も、曲がったものや腐ったものは利用出来なかったので、山にそのまま置いて腐らせていました。
建材として使い道がないうえに山奥から運搬するため、コストがかかり困難だったのです。
しかし今、チップに加工して買い取ってもらうという新たな動きが出てきています。
バイオマス発電の燃料として買い取っているのが重機メーカーのコマツ栗津工場(石川県小松市)です。
昨年4月から地元の森林組合から年間7000トンの木材チップを購入しています。
自社工場で使う電気を補うために発電設備を新設しました。
これまで北陸電力から購入していた年間150万kwhの電気を自社で賄えます。
更に、発電の結果得られる温水は、冬季には暖房として使っています。
こうして、発電時に発生する熱を活用することで年間800キロリットルの重油の削減に成功しました。
電気だけに限ると発電する方が購入より高くなりますが、冬季の暖房への利用を含めると全体的には安くなっているとコマツではいいます。
更に、コマツはかが森林組合と提携して調達コストの削減に成功しました。
木材をチップにする過程で使用する機械、整備にコストがかかる海外製ではなく、整備コストの安い地元企業に依頼したのです。
コマツは、FITを使えば、年間4000万円ほどの売電収入を得ることも可能ですが、その予定はないといいます。
その理由について、コマツ栗津工場生産技術部の三谷 典夫さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「FITは電気の消費者の負担になっているわけですね。」
「大規模なバイオマス発電をやって輸送で燃料を沢山使ってCO2を出すというのはバイオマスの理念に反すると思うんですね。」
「地産地消でうまく使っていくのが一番バイオマスの理念にかなっているのではないかと思っています。」
私もコマツの三谷さんの考え方に大賛成です。
国内外を問わず、出来るだけ地産地消のかたちで今回ご紹介したバイオマス発電やその他太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーによる発電を普及させていくべきだと思うのです。
その流れを加速させていくためにも、少しでも早くこうした発電コストを従来の化石燃料による火力発電や原発よりも低く抑えることが求められるのです。