2015年12月24日
アイデアよもやま話 No.3268 ”食品ロス”への新たな取り組み その4 先進的な取り組みに挑むフードバンク!

まだ食べられる食品を捨ててしまう“食品ロス”については、アイデアよもやま話 No.3226 最新の食品ロス事情!などでこれまで何度かお伝えしてきました。

そうした中、10月25日(日)放送の「サキどり」(NHK総合テレビ)で”食品ロス”への新たな取り組みについて取り上げていました。

そこで、5回にわたってご紹介します。

4回目は、先進的な取り組みに挑むフードバンクについてです。

 

名古屋のフードバンク、NPO法人セカンドハーベスト名古屋では、扱っている食品の量は500トンを超えているといいます。

ちなみに、フードバンクとは、賞味期限が近いなどの理由でまだ食べられるのに捨てられる食品受け入れ、福祉団体などに無償で提供する活動です。

こちらのフードバンクでは毎日10数名のボランティアが集まり、児童養護施設や母子家庭など、県内260の福祉団体を支援しています。

およそ100社の企業がこの活動に協力しているといいます。

 

レトルト食品や缶詰などを扱う生協の物流センターでは、このフードバンクとの連携によって“食品ロス”を劇的に削減することが出来ました。

生協の組合活動支援部長の見山 新一さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「(“食品ロス”の削減量は)だいたい年間3万点くらい、18トンですね。」

「それを今セカンドハーベストの皆さんにお渡ししていますので、実際ですね、廃棄ゼロになりました。」

 

企業の“食品ロス”削減に力を発揮するフードバンクですが、更にセカンドハーベスト名古屋で行っている画期的な取り組みが今全国から注目されています。

青果卸売り会社と提携したフードバンクの取り組みは既にありますが、野菜を大量に扱っているフードバンクは全国でも珍しいといいます。

野菜の袋詰めなどを行うこの青果卸売り会社では、大きさの違いやわずかな痛みによってスーパーに出荷出来ずに廃棄する野菜が大量に発生、その量は年間400トンに上ります。

こちらの青果卸売り会社の加工課長の塚原 康成さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「(食べる分には、こうして廃棄される野菜は)全然、全く問題ありません。」

「ただ、量販店さんから指定された規格がありますので、それに従って加工しないと量販店さんにご迷惑をかけますのではね出しております。」

 

では、なぜこれまでフードバンクでは野菜をあまり扱えなかったのでしょうか。

通常フードバンクでは企業から受け取った大量の食品を保存し、必要に応じて少しずつ福祉施設に提供していきます。

ところが野菜の場合、長く保管すると腐らせてしまう心配があります。

そこで、フードバンクで扱うのは缶詰やレトルト食品などが中心になってしまうのです。

 

セカンドハーベスト名古屋の理事長、本岡 俊郎さんがフードバンクの活動に参加したのは6年前、扱う食品の種類が限られている現実をなんとか変えたいと考えました。

本岡さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「(2008年に)リーマンショックがあって、特にこの愛知県とか東海地方は大量の失業者、本当にひどい状態で暮らしておられたんですよ。」

「緊急の時に乾パンとか水とかバナナを配るのはいいけれど、これは野菜が必要だねと、ミネラルが必要だね、ビタミンが必要だねということに思いが至った。」

 

フードバンクで野菜を扱うために、本岡さんは入荷したものを必要とする団体に引き渡す新しい仕組みを作りました。

こだわったのは時間の短縮です。

昼過ぎ、フードバンクの事務所に野菜が到着、これをスタッフが手分けして各福祉団体に振り分けます。

福祉団体に定期的に行っているアンケートの結果から各団体が必要とする野菜の種類や量を前もって把握しており、それに基づいて振り分けているのです。

こうして振り分け作業はおよそ30分で完了、すると続々と福祉団体の皆さんがやってきます。

決まった時間に取りに来てもらう協力をお願いしているのです。

 

福祉団体では、食事の予算に限りがあるので、値段の高い野菜は中々買えません。

フードバンクの野菜が大きな助けになっています。

ある福祉団体の職員の方は、次のようにおっしゃっています。

「食は本当にこういう障害をお持ちの方は体調とか健康に直結することなもんですから、大変助かっています。」

 

“食品ロス”を減らすために今、本岡さんは扱う食品のジャンルを更に広げていこうとしています。

栄養価の高い乳製品やハムは賞味期限が短いのです。

こうした食品も傷まないよう素早く届ける新たな仕組みを作り、福祉に生かそうと考えています。

 

さて、番組の最後に、愛知工業大学の小林准教授は、次のようにおっしゃっています。

「お店の売り方というのもちょっと変わってきているところがあって、例えばあるスーパーさんでは“オネスト経営(正直経営)”っていうコンセプトで、例えば「今年は産地が台風で被害に遭ったのであんまり大量には入荷していません、で味もあまり美味しくありません」ということをしっかり書いてですね、消費者にちゃんと情報を伝えて許容してもらう、そういう努力もお店の方ではちょっとずつなんですけど進んでいる。」

「だから、そういったものに消費者がどう反応するかというのはこれからの問題だと思うんですけど、いかがでしょうか。」

 

今回ご紹介したようなフードバンクの先進的な取り組みは“食品ロス”の削減に向けて大きく貢献出来ると思います。

 

そもそも、スーパーなどには規格通りの大きさ、かたちの、しかも綺麗な野菜などが並んでいますが、それは私たち消費者が期待していることの裏返しなのです。

本来、こうした食品にはいろいろな大きさやかたちをしているものがありますが、自宅で料理したり食べる分には何ら問題はないといいます。

 

また、野菜が値上がりしている時期に限らず、大きさ、かたちにはこだわらず、少しでも安く買いたいという消費者は少なくないと思います。

ですから、スーパーなどでこうした規格外の野菜などの特設コーナーを設けることによって“食品ロス”の一部は防げると思うのです。

ということで、フードバンクの取り組みとは別に、是非、スーパーなどには積極的にこうした取り組みに臨んでいただきたいと思います。

 

また、アイデアよもやま話 No.3226 最新の食品ロス事情!でもお伝えしたように、全ての食品にタグなどを付けて、それに消費(賞味)期限を記録しておき、冷蔵庫がそうしたデータを読み取って、どの食品が消費(賞味)期限を迎えそうかを表示してくれるようになれば、家庭での食品ロスは格段に減ると期待出来ます。

 

いずれにしても、日本の伝統的な“もったいない精神”を生かした一人一人の消費者、あるいは個々の企業や自治体などの取り組みがやがて“食品ロス”ゼロを実現させるのです。


 
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