以前、アイデアよもやま話 No.2833 鉄より軽くて強いナノセルロース 実用化へ!で木からできた新素材、ナノセルロースについてご紹介しました。
そうした中、9月14日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で木からできた新素材の最新状況について取り上げていたのでご紹介します。
今回ご紹介する植物由来の新素材は、将来1兆円産業に育つといわれています。
新素材は京都大学 生存圏研究所 矢野研究室(京都府宇治市)で開発されています。
新素材の第一人者、矢野 浩之教授が研究開発しているのは、植物繊維の一種であるセルロースをナノレベル(ナノは10億分の1m)まで細かくした素材、セルロースナノファイバーです。
矢野教授は、セルロースを微細化すると優れた特徴を発揮することを発見したのです。
セルロースナノファイバーは、紙の原料となるパルプから作られます。
パルプを水に溶かし、特殊な機械や化学薬品などを使って細かくほぐしていきます。
見た目には、ただの糊のように見えますが、驚きの特徴があります。
水を除いて乾かすだけでプラスチックのような材料に変わるのです。
セルロースナノファイバーを固めた板の特徴の一つは、鋼鉄並みの強度です。
更に、160℃に熱した油に普通のプラスチックとセルロースナノファイバーを入れてみると、わずか10秒でプラスチックは変形しますが、一方セルロースナノファイバーは高温にも耐えられます。
また、セルロースナノファイバーは、髪の毛の約2万分の1の細さながら、抜群の強度を誇る日本初の新素材が世界の注目を集めています。
矢野教授は、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「従来のプラスチックに替わる、より性能の優れた材料です。」
「更に、今までプラスチックでは使えなかった金属部分にもこの材料ははいっていく可能性があります。」
ライバルとされるのが既に航空機などで実用化されている炭素繊維ですが、石油や石炭を原料とします。
一方、セルロースナノファイバーは植物由来なので環境負荷が低く、将来的にはコストでも優位に立てるといわれています。
また、フィルム状にしたセルロースナノファイバーを特殊な液に浸すとあっという間に透明になりますので、スマホ画面などに応用出来ます。
矢野教授は、この新素材、セルロースナノファイバーで日本に新たな産業を生み出したいと考えており、次のようにおっしゃっています。
「水を除いたら、(木の)半分はセルロースですね。」
「日本の裏山にある木から車が作れるかもしれない。」
「原料の林業から始まって、最終製品の自動車や情報端末までつながっていけば、非常に大きな産業になっていく可能性があると思います。」
日本は、国土の7割が森林です。
なので、この素材の実用化が始まれば、今は捨てられている間伐材だけでなく、木造家屋を取り壊した後の廃材、あるいはミカンジュースなどの絞りカスなども有効活用出来るといいます。
木から生まれた新素材、これが日本の産業を変える日が来るかもしれません。
ただし、課題はコストで、鋼鉄やガラス、合成樹脂と比べたコストパフォーマンスを高めることだといいます。
ということで、セルロースナノファイバーは未だ市販化には時間がかかりそうですが、将来的にはプラスチックや金属の代替素材として大いに期待出来るのです。
そして、このことはCO2排出量削減による地球温暖化の阻止に貢献出来、ひいては持続可能な社会の実現につながるのです。