2015年08月12日
アイデアよもやま話 No.3153 光るシルクが日本の養蚕業復活の起爆剤になる!?

6月8日(月)の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で光るシルクについて取り上げていたのでご紹介します。

 

遺伝子組み換え技術を使って自ら発光するクラゲやサンゴ、イソギンチャクなどの体内で発光する物質、蛍光タンパク質を作る遺伝子を取り出し、それをカイコに組み込むことで新たな素材、光るシルクが生み出されました。

紫外線を当てると光るシルクはファッションの素材などとして注目され、世界的なアーティストも虜にしています。

 

この光るシルクを開発したのは、農業生物資源研究所(茨城県つくば市)です。

2000年に世界で初めてカイコの遺伝子組み換えに成功、以来この分野の研究で世界をリードしています。

カイコの遺伝子組み換え作業はざっと以下の通りです。

直径わずか1mmのカイコの卵に100分の1mmという細い針を使って穴を開け、クラゲの遺伝子を注入、精密さが求められます。

この研究では、まずカイコの染色体のいろいろな場所に蛍光タンパク質の遺伝子を組み込みました。

すると、組み込んだ場所によってカイコの光る場所が変わることが分かったのです。

試行錯誤を繰り返してノウハウを蓄積、こうして光るシルクの開発に成功しました。

 

この技術を応用し、クモの糸の遺伝子を組み込んで作ったのがクモ糸シルクです。

クモの糸が持つ切れにくい特性を受け継いでいて、強度が普通の1.5倍あります。

衣服や手術用の糸などに利用が見込まれています。

農業生物資源研究所では、将来的には遺伝子組み換えカイコを農家でも飼育出来るようにし、供給が賄えるようにしたいと考えています。

カイコに薬の原料も作らせることも出来るこの技術、将来私たちの暮らしを大きく変える可能性を秘めています。

 

一方、遺伝子組み換えをした生物ですから、自然界に混じってしまうと生態系を変えてしまうのではないかという懸念もあります。

なので、農業生物資源研究所では厳重に管理しているといいます。

ただし、生き物の中でカイコは5000年の歴史の中で人に飼い慣らされてきたので外に逃げてしまったとしても1匹では生きていけないといいます。

なので、遺伝子組み換え生物の中では安全性を担保出来るといいます。

今は技術的に日本が世界をリードしており、ライバルとしては中国がいて、先行している間に産業化をしていく必要があるという危機感を持っているといいます。

日本総研の高橋 進む理事長はこうした状況について次のようにコメントされております。

「量産といえば日本のお家芸で、かつては世界を席巻していたわけですね。」

「ですけど今は中国やインドに押されて、かつて220万戸あった養蚕農家は今500戸を割っているんだそうですね。」

「だけど、今回のように遺伝子組み換えで絹織物にするだけでなく、例えば人工血管だとか化粧品の素材だとかいろいろなものに使える。」

「それからカイコ自身がタンパク質を作り出すので、ワクチンだどかカイコ自身が薬品工場になる、そういう応用をしていくと日本の養蚕業をもう1回立て直す大きなきっかけになるのではとすごく期待しているんですけどね。」

 

遺伝子組み換え技術というと、人工的に生物の本来の姿を変えてしまうので何となく不気味さを散じてしまいます。

特に遺伝子組み換え食品についてはその影響がはっきりせず、敬遠されているようです。

ですが、こうした技術によって光るシルクを使った衣服は既に実用化され、手術用の糸、化粧品、人工血管、ワクチンなど新たに様々な素材誕生の可能性を秘めています。

ですから、人体や生態系に影響を与えないように十分注意を払いながら遺伝子組み換え技術に取り組んで欲しいと思います。


 
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています