2015年06月29日
アイデアよもやま話 No.3115 EVによる長距離ドライブ体験から見えてきたこと その1 現状の問題点!

ご存知のように、まだまだフル充電での航続可能距離の短いEV(電気自動車)の普及には充電インフラの整備が不可欠です。

そこで、以前から、地球環境やエネルギーの問題解決につながるEVの普及を推進すべきであるという立場から、購入して今年で5年目の日産リーフに乗って、長距離ドライブを実際に体験してみたいと思っていました。

また、その行先については、原爆の恐ろしさを多少なりとも実感してみたいという思いから最終目的地を原爆ドームのある広島県と考えていました。

その距離は横浜市内の自宅から片道約900kmです。

ところが、昨年までは充電インフラが整っておらず、短期間で目的地に到達するのはほぼ不可能でした。

というのは、日産リーフ(2011年2月納車のリーフの初期モデル)では、80%の充電で安心して走行出来る距離はせいぜい80km程度なので、この間隔で高速道路のSA(サービスエリア)やPA(パーキングエリア)に急速充電器が設置されていなければ長距離ドライブは無理だったからです。

 

ちなみに、リーフの場合、搭載されているバッテリー容量は24kwhです。

そして、一般家庭で使う200V電源での普通充電では充電ゼロの状態からフル充電まで8時間、急速充電では一般的に80%充電まで30分といいます。

 

そうした中、昨年から今年にかけて、全国のいたる所で大変なスピードで急速充電器の設置が進みつつあります。

ちなみに、今回の長距離でドライブの途中立ち寄った、ある日産販売店ではごく最近設置されたため、カーナビ上では普通充電器の表示のままで、到着時には急速充電器が本当に設置されているのか不安を感じたくらいでした

更に、経済産業省平成26年度補正予算充電インフラ整備促進事業における高速道路利用調査実態事業が5月1日(金)より開始されました。

それに伴い、4月27日(月)より、対象期間中は、高速道路がどこまで行っても事実上1000円となるEVなどの高速道路利用実態調査(キャッシュバック)のお客さま事前登録が開始されました。

ただし、具体的には以下の通りなので要注意です。

58月:一料金区間当り、1,000円を超える利用に対して、1,000円超過分をキャッシュバック

912月:一料金区間当り、1,000円を超え2,000円までの利用に対して、1,000円の超過分、2,000円超過する場合は利用料金の半額をキャッシュバック

※キャッシュバック額は、一月当り2万円、全調査期間で6万円が上限

※キャッシュバックは、累計金額から事務手数料1,000円を引いた金額。

 

ですから、単純に1000円で高速道路乗り放題というわけではないのです。

それでも、これは絶好のチャンスだと思い、6月21日〜27日にかけて、6月21日(日)から6月27日(土)にかけて6泊7日で日産リーフにより往復約1800km(1日平均約300km)の長距離ドライブに出かけてきました。

 

そこで、2回に分けて長距離ドライブ体験から見えてきたことをお伝えします。

1回目はEV普及に向けての現状の問題点で、以下にまとめてみました。

(EVに搭載するカーナビ関連の問題点)

・EV独自に必要とされる適切なデータが十分に提供されていない

リーフには、パソコンで長距離ドライブにおける途中の急速充電を想定したシミュレーション・サービスがあり、それをリーフのカーナビに転送する機能がある

そして、カーナビでは、高速道路上でのお勧めの充電ポイント(SAやPAなど)を表示してくれるが、急な上り坂や下り坂での適切な電費を考慮した、あるいはSAやPAのみでの急速充電器の利用を考慮した条件になっていない

  従って、カーナビの指示通りに走行すると電欠を起こすリスクを伴う

  また、カーナビが走行途中で一旦高速道路を出て、一般道にある急速充電器や普通充電器で充電するルートを推奨する場合があるので、鵜呑みにすることは時間的にも経済的にもお勧め出来ない

(急速充電器関連の問題点)

・急速充電器の設置場所が分かりにくいSAやPAがある

  2回ほど、SAでの急速充電をする際に、その設置場所が分からず、迷ってしまった

・SAやPAに設置済みの急速充電器には、メーカーごとにいろいろなタイプのものがあり、以下のように急速充電器の操作方法がバラバラで、最初使用する場合に手間取る場合がある

スタート/ストップのボタンの位置が左右バラバラで間違いやすい

  コネクターの形状により操作方法が異なり、慣れないと操作に手間取る

  急速充電器ごとに充電量の割合の設定が80%、85%、100%など様々な設定となっており、機種によってその設定が分からない場合がある

このため、1日のうち何度も充電して100%充電を続けると、バッテリーへの負荷がかかり、リーフのバッテリーの温度計の目盛が10まで上がったことがあった

しかし、その後バッテリーへの負荷を最小限にするような走行を続けていると温度計の目盛が9に減った

その後、立ち寄った日産の神戸店では、充電量を75%、80%、100%と自分で設定出来、75%で充電後も温度計の目盛は9のまま変化しなかった

そこで、充電量の割合を80%以内に抑えていれば、1日のうちに数回繰り返し急速充電してもバッテリーへの負荷はそれほどかからないのではないか、一方、充電回数は少なくとも100%充電を続けるとバッテリーへの負荷がかかるのではないかと思った

・高速道路の全てのサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)に急速充電器が設置されているわけでないので以下のようなリスクがある

SAやPAの急速充電器が故障していると、長時間足止めされるリスクがある

  立ち寄ったSAで充電中のリーフのドライバーによると、直前のSAの急速充電器が故障のため急遽こちらのSAで充電することになったという

  もし、このドライバーのリーフの走行可能距離が直前のSAからこちらのSAまでの距離より短ければ、JAFなどの支援を受けなければならず、最低でも1時間以上は動けなくなっていたはずである

航続可能距離とバッテリーへの負荷軽減に照らしてちょうど良いタイミングで充電したくても出来ず、そのため結果として充電回数が増えてしまい、バッテリーへも負荷を与えてしまう

・急速充電器によって、30分の充電でバッテリーの充電量が80%、85%、あるいは100%と設定が異なる

  しかも、急速充電器の表示仕様が標準化されていないため、具体的な設定が分からないものがある

  そのため、意図せず100%充電され、バッテリーに大きな負荷をかけてしまうことがある

・SAやPAの急速充電器の台数は一般的に1台、多い所でも2台なので、週末などには待ち行列が出来てしまうケースが発生する

・急な上り坂や下り坂がしばらく続くと、航続可能距離が大幅に変わってくる

急な上り坂で航続可能距離が急激に減っても、その後の下り坂で航続可能距離が増える

従って、トータルとしては、航続可能距離は平坦な道とそれほど変わらないが、電欠を防ぐためにはドライブルートで上り坂や下り坂がどの程度あるのか事前に確認しておく必要がある

実際に、フル充電で横浜市内を出発し、足柄SAまでの約80kmのドライブでは、急な上り坂が続き、時速60〜70kmに減速して走行したが、SAに到着した時点で航続可能距離は約15kmにまで減っていた

逆に、急な上り坂で航続可能距離がそれまでの100km以上だったのが80kmくらいまで減ってしまったが、その後急な下り坂がしばらく続き、目的地到着時には120kmほどになっていた

ちなみに、今回、とても役立ったのは、リーフ・オーナー向けの日産N-Link OWNERSのマイカーサービス>マイカーサポート>カーウイングス機能だった

こちらの機能では、ドライブの途中の上り坂や下り坂の高低、および途中の充電ポイント間の距離が表示されるので、単に走行距離だけでなく、途中の高低差を考慮した走行可能距離を割り出して適切な充電ポイントを見極めることが出来た

また、通常のカーナビでは現在地を出発点として目的地を設定するが、カーウイングスでは任意の場所を出発点として登録することが出来たので、事前に1日単位のドライブスケジュールを容易に作ることが出来た

・急速充電を繰り返すとバッテリーに負荷をかけ、バッテリーの寿命にも影響を与える

今回の横浜から広島までの往復約1800キロの長距離ドライブでは、一日のドライブで急速充電を最高7回行った

その結果、バッテリーの温度が通常5目盛を指しているのが、10目盛まで上がったことが1回だけあった

しかし、翌日には6目盛まで下がっていた

・急速充電器を設置済みのSAやPAの間の距離がバラバラなの、次の充電場所までの距離があると、まだ充電の必要がなくとも充電してしまう

・SAやPAに設置済みのほとんどの急速充電器の台数は1台のみで、ごく一部で2台設置されているSAがあった

今後、EVの普及に向けて同じ時間帯での充電が重なると、1台につき最大30分の待ち時間が発生する

   今回、7日間で1日当り6回ほど急速充電をしたが、既に充電中のEVにより2度だけ約15分間待たされた

   また、1度だけ充電待ちのEV1台を見かけた

・ホテルなどの宿泊施設では、まだまだ充電器の設置が進んでいない

  今回の日程で、3つのホテル、および1つのリゾートホテルに宿泊したが、そのうち充電設備があったのは、リゾートホテルのみ(普通充電器2台)であった

急速充電はバッテリーに負荷を与えるのに対して、普通充電は時間はかかるがバッテリーに負荷をかけないので、ホテルなどの宿泊施設への普通充電器の設置は望ましい

しかし、まだまだ宿泊施設への普通充電器の設置は普及していない

 

このように、EVの普及に向けて、まだまだEVそのもののフル充電での走行可能距離を伸ばす以外に、充電インフラの整備を進める必要があります。

そこで、次回は今回提示した問題点の解決策についてお伝えしまいと思います。


 
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