1月3日(土)放送の「NHKスペシャル」(NHK総合テレビ)から始まった全5回のシリーズのテーマは「ネクストワールド
私たちの未来」でした。
ここで言うところのネクストワールドとは30年後の2045年の未来を指しています。
1月24日(土)放送の3回目の番組のテーマは「人間のパワーはどこまで高められるのか」でした。
そこで、人間の脅威的なパワーアップについて6回にわたってご紹介します。
1回目はパワーアップする身体能力についてです。
今から30年後の2045年には、私たちはスーパーマンのような肉体と頭脳を持っているかもしれません。
今より10倍以上の力と疲れ知らずの身体に、そして頭もずっと賢くなって外国語もペラペラになっているかもしれないのです。
肉体と頭脳をパワーアップさせるのは人間と機械との融合、驚異のテクノロジーが実現させてくれるのです。
アメリカ陸軍最大の施設があるアバディーン試験場(メリーランド州)では、戦場に送り込む兵士を武装するための最先端のテクノロジーを開発しています。
アメリカ軍は軍事ロボット研究で世界を圧倒しています。
強力なパワーを誇る猛獣のような運送用ロボット「LS3」は兵士に代わり悪路を突き進み、重い軍事物資を運びます。
また、ヒト型ロボット「ATLAS」は人間に代わって危険な場所に飛び込むために開発されました。
しかし、ロボットがいかに進化しても人間の兵士が持つ判断力や適応力を持たせるためには限界があることが分かってきました。
そこで、人間にロボット技術を搭載すればアメリカ軍は人間とロボットを合体させたスーパー兵士の開発に動き出したのです。
ヒト型ロボットに使われている技術を応用したパワーアシスト装置です。
靴に取り付けた高性能センサーは足の動きを1000分の1秒単位の正確さで捉えてリュックの中にあるコンピューターに送ります。
コンピューターは足が地面を蹴る次のタイミングを予測し、駆動装置に指示します。
すると、装置は中にあるワイヤを引っ張り上げて地面を蹴り出す力を強力にアシストします。
こうして、スーパー兵士は疲れを知らず、どこまでも行けるように感じます。
スーパー兵士はゲリラ戦や市街戦など人間の活動が欠かせない戦場での切り札と位置付けられています。
他にも、弾丸を吹き飛ばす装甲をまとうスーパー兵士も数年後に登場する見込みです。
暗闇でも行動出来る特殊な暗視装置も組み込まれ、戦闘能力は一挙にパワーアップします。
アメリカ陸軍研究所のマイク・ラフィアンドラさんは、30年か40年後には兵士だけではなく警察や消防士、あるいは民間人も使っているのではないかと思っています。
人と機械を合体させるテクノロジーは軍事のみならず、私たちの生活を大きく変える可能性がるのです。
マサチューセッツ工科大学では、身体に第三、第四の腕を追加するロボット技術、エクストラ・アームを開発しています。
ロボットの腕をまるで生き物のように動かしているのは人工知能(AI)です。
AIは腕に取り付けた加速度センサーや目線カメラなどを使って人間の動きをデータ化し、それらのデータから人が次にどう動くか予測し、動作を助けるようにロボットが自分で腕を動かし、人間の指示は不要です。
使えば使うほどAIはその人の癖を学習し、動作の精度が向上します。
指の数を増やすエクストラ・フィンガーの技術も進んでいます。
こうした技術はウエアラブル・ロボットと呼ばれ、人間の身体能力を拡張します。
ハリー・アサダ教授は、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「やはりロボットでは総合的な判断、あるいはきめ細かな指の動きは難しい。」
「そういう認識に立って、人間の良い能力とロボットの能力をうまく組み合わせて、ウエアラブル・ロボットも人間の能力の拡大を最終的に目指すものだと思います。」
2045年、仕事でも家庭でも人間の生産性は格段に高まっていると言われています。
工場などでは、危険な場所でも4本の腕を使って作業を効率よく進めたり、家庭では赤ちゃんの世話をしながら手際よく家事をこなすといったことが実現しているかもしれません。
確かに、人間とロボットの良さを兼ね備えるウエアラブル・ロボットは公私を問わず人間の生産性を格段に高める可能性を秘めています。
でも、全ての機能をウエアラブル・ロボットというかたちで持たせることには疑問を感じます。
ウエアラブル・ロボット、ヒト型ロボット、そして産業用などその他のロボットというように自ずと適材適所の住み分けがなされるようになっていくと思うのです。