1月3日(土)放送の「NHKスペシャル」(NHK総合テレビ)から始まった全5回のシリーズのテーマは「ネクストワールド
私たちの未来」でした。
ここで言うところのネクストワールドとは30年後の2045年の未来を指しています。
そこで、このシリーズを通して人工知能(AI)の進化で発達する未来予測についてご紹介します。
1回目の番組のテーマは「未来はどこまで予測できるのか」でした。
そこで、1回目の放送から今回ご紹介するのは2045年にはプライバシーという概念がなくなるという予測についてです。
社会の様々な分野を覆い始めたAIの予測ですが、予測をさらに完璧にすべくより高度なAIを開発する競争が始まっています。
IT界に君臨するグーグルは世界で最も普及した検索とメーリングシステムを持ち、莫大な情報が集まります。
そのデータを分析するAIを開発するために世界最高の技術者を集めています。
更にAIやスーパーコンピューターを研究するベンチャー企業にも目を向け、次々に買収しています。
グーグルが大きな関心を持つ次世代のコンピューターは量子コンピューター“D−Wave”です。
量子力学の原理に基づいた世界初の量子コンピューターで異次元の計算速度を持つと言われています。
巨大な姿は単なる冷却装置に過ぎません。
その正体はわずか2cm四方の小さなチップで、現在のスーパーコンピューターで数千年かかる計算を一瞬で行えるようになると見られています。
グーグルの検索担当副社長、タマラ・イェホシュアさんは番組の中で次のようにおっしゃっています。
「我々のAIは今や質問される前に答えを出せます。」
「あなたの次のフライトは何時とか遅れているとか聞かれる前に答えます。」
「将来的には何が起きるのかを正確に予測し、世界をより良くするためにあらゆる方法でAIを使用しているでしょう。」
爆発的に進化するAIは否応なく世界を一変させます。
その将来をいち早く予見した人物がおります。
未来学者のレイ・カーツワイル博士で、スキャナーや音声認識ソフトなどを次々と発明してきた天才発明家で、現在はグーグルに身を置いています。
描くのはコンピューターが人間の知能を凌駕するという未来です。
カーツワイル博士はそれを特異点(Singularity)と名付けました。
このままいけば、2045年までに人類全ての知能を結集してもかなわないコンピューターが生まれると予測しています。
カーツワイル博士は、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「このスマホは私が学生の時に使用していたコンピューターと比べ値段は10億分の1、性能は10億倍以上あります。」
「我々は今後25年間も再び同じ進化をたどるのです。」
「値段も今の10万分の1になるし、大きさも血液細胞と同じくらいになります。」
「我々は世界中から増々多くの情報をかき集め予測能力を高めていくことになるのです。」
未来予測が進化するためには今とは比較にならないほど膨大な個人情報が必要になります。
世界はそんな未来に向かって舵を切っています。
世界最大の家電市、IFA
国際家電見本市(ドイツ・ベルリン)ではその動きが現れていました。
インターネットオブシングス(Internet Of Things:IOT モノのインターネット化)と呼ばれる動きです。
この世に存在するあらゆるモノにチップとセンサーを埋め込み、情報を収集しようとする試みです。
インテルでは、IOTは毎年17%ずつ市場が成長し、今後10年で700兆円の市場になると予測しています。
インテルが開発したのは、超小型コンピューター「エジソン」です。
「エジソン」をセンサーと共に埋め込めば、あらゆるモノをインターネットに簡単につなげることが出来ます。
利用者の最新のデータを大量に取り込み、AIの予測の精度は飛躍的に向上します。
人間の何気ない会話や動きをデータ化するセンサーも登場しました。
ソシオメトリック・ソリューションズ(アメリカ・ボストン)では社員一人ひとりに電子社員バッジ付けられ、これにより勤務中の全ての音声や話した相手との距離、その人がどれだけ動いたか細かな身振りに至るまで記録されます。
いつ誰と誰が活発に意見交換をしたのか。誰が会話の中心か、声の大きさやトーンまで100分の1秒単位まで分析出来ます。
社員の性格やリーダーシップの有無を把握出来ます。
既に効率的な会議の方法や組織作り、人事異動に活かし始めています。
ベン・ウェーバーCEOは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「この技術は世界中の全ての産業に大きな影響を与えると思います。」
「技術が安価になるにつれて装置は服などに埋め込まれ、実質無料になるでしょう。」
「その時こそ爆発的な可能性を生むことになるのです。」
更に今、センサーの能力は人間の感情を正確に読み取れるようになっています。
エモートティエント(アメリカ・サンディエゴ)の開発したシステムでは、一瞬の表情を読み取り、怒り、楽しみなど9つの成分に分けて感情を読み解きます。
解像度がよければ、数百人の感情を同時に読み取れます。
30年後には250兆個のセンサーが世界を覆い尽くすと言われています。
コップやゴミ箱、道路から街灯まであらゆるモノが情報を収集するセンサーになります。
2045年にはプライバシーという概念がなくなり、極限まで効率性を高めた社会が到来すると考えられています。
未来の世界を予見させる巨大な秘密のシステムも出現しました。
NSAデータセンター(アメリカ・ユタ州)はアメリカの諜報機関により2年前に作りあげられました。
全世界で交わされた電話やメールの他、クレジットカードから駐車場の利用記録までデジタル空間を行きかうあらゆる個人記録を収集していると言われています。
ところがその巨大な計算能力で何を予測しようとしているのか一切明らかにしていません。
こうしてAIが進化すれば、2045年を待たずに世界中の個々人のプライバシーはほとんど丸裸状態になっており、その気になればAIにより簡単に誰の個人情報でも入手出来てしまう時代を迎えるのです。
こうした情報が個人的にも社会的に有益なかたちで活用されれば良いのですが、悪用されるリスクもあります。
ですから、こうした悪用リスク対応策をきちんと検討したうえでのAIの活用を進める必要があるのです。