1月7日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」 (テレビ東京)から3夜連続でニッポンの素材力について取り上げていたのでご紹介します。
3回目は有機ELです。
大手化粧品メーカーの資生堂が顧客向けのメイク教室で新たに導入したのが有機EL照明です。
例えば、LED照明に手をかざすと手影が出てしまいますが、有機EL照明は手影が消え、血色もよく見えるのです。
資生堂のビューティクリエーション研究センターの関谷
佳代さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「まるで自然光と同じようなレベルの高さで色を表現出来るのが有機EL照明なんですね。」
「ぎらつかずに肌がきれいに見えますので、メイクをしていく上で非常に見やすい光と言えるんですね。」
テレビディスプレイの次世代素材としてもてはやされた有機EL、メーカーは相次いで開発に乗り出しましたが、コスト面の課題などから目立った成果は上げられませんでした。
その有機ELが今照明分野で再び注目を集めています。
三菱重工や三井物産がつくったルミオテック(山形県米沢市)が今力を入れているのが歯医者向けの医療用照明です。
三菱重工の機械・設備システムドメインの丸山
圭太さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「(有機EL照明は)影が出ないのが特徴で、口の中まで光が届くので診察・治療がしやすい。」
「LEDでカバーできない領域もあると我々は思っておりますので、非常に注目している技術の一つかな(と考えています)。」
では、なぜ有機EL照明ではほとんど影が出ないのでしょうか。
LED照明は点で発光するため対象よりも影は大きくなります。
これに対して、有機EL照明は面全体が発光し、光がいろいろな方向から当たるため影が出来にくいのです。
なので、わずかな影がミスにつながりかねない医療用の照明に有機EL照明はピッタリだといいます。
一方、世界でも有数の有機EL研究機関、山形大学・米沢キャンパスの有機エレクトロニクス研究センター(山形県米沢市)で驚くべき研究が進められています。
粉末状のモノが有機ELの素材となる有機半導体で、この粉末を溶かすとインク状になります。
これを使って液体化された有機ELを作るというのです。
実用化出来れば、有機ELをインクとして使い、プリンターで照明を作ることさえ可能になるといいます。
研究を始めたのは4年前、これまではなかなか必要な明るさを得られませんでしたが、遂に昨年12月に商品化出来るだけの性能を引き出すことに成功しました。
液体化することで使い道は格段に広がったのです。
また、有機ELを製造するには高価な機械が必要でしたが、この方法を使えばコストを現状の100分の1まで削減出来るといいます。
この研究センターの城戸 淳二教授は、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「蛍光灯並みの値段になれば、どんどん(有機EL照明に)入れ替わっていくと思います。」
「爆発的に普及すると思いますね。」
現状では有機EL照明はLED照明に比べて価格がほぼ2〜3倍といいます。
また、寿命もLED照明はおよそ4年半、有機EL照明は3年半といいます。
ですから、消費電力や寿命の観点からもLED照明と遜色なくなれば、有機EL照明はLED照明に取って代わる存在になると思われます。
特に、プリンターでの有機ELの商品化が実現されれば、用途の多様性からして様々な分野からの引き合いが期待出来ます。
更に、蛍光灯並みの値段になれば、有機EL照明はまさに照明革命をもたらすはずです。