2014年04月13日
No.2736 ちょっと一休み その432 『宇宙船地球号 その13 小規模・分散型社会を実現した取り組み!』
昨年11月29日(金)から今年1月24日(金)まで4回にわたって「スペースシップ アースの未来」(NHK BS1テレビ)が放送されました。
そこで、以下のような流れでこれまでご紹介してきました。


1月24日(金)放送の「スペースシップ アースの未来」(NHK BS1テレビ)の4回目は「『新たな海図』を求めて」というテーマでした。
今回は、小規模・分散型社会を実現した取り組みについてご紹介します。
 
世界のエネルギーのおよそ半分を消費する先進諸国、小規模・分散型社会を作ろうという動きはこうした国々で始まっています。
大量消費社会を牽引してきたアメリカ、そのアメリカで新たな社会モデルを実現し、化石燃料の消費を大きく減らした都市があります。
オレゴン州のポートランド市、福岡市ほどの面積におよそ60万人が住むこの街にはいたる所に公園や街路樹が整備され、全米で最もグリーンな町と言われています。
そんなポートランド市もかつては大規模な都市開発が急激に進められていました。
その結果、大気や川が汚染され、人々が住みにくい街になってしまいました。
 
そこで、ポートランド市民はこれまでと違う街を目指しました。
それが、「グリーンシティ」です。
自動車中心の都市開発が進んだ1970年代、ポートランド市は自動車に頼らない新たな街づくりへと舵を切りました。
市が目を付けたのは時代遅れとされていた路面電車でした。
現在、市の中心部には路面電車の停留所が数百メートルごとに設けられています。
1日の平均利用者は10万人以上、運賃は2時間乗り降り自由でおよそ250円です。
路面電車を充実させることで自動車の利用を大幅に減らすことに成功、排気ガスの量は半分以下になりました。
そしてもう一つ、市が注目したのが自転車です。
平地が多い市内の大部分に自転車専用レーンを整備しました。
公共交通機関に自転車で乗り込むことも出来、車両には専用の自転車ラックも備え付けられています。
無料で工具が使える自転車スタンドもあります。
自転車を利用しやすくする様々な工夫を重ね、今では市民の10人に1人が自転車通勤をするまでになりました。
更に、食材の地産地消も自動車の利用削減につながりました。
週に5日、市内の各地でファーマーズ・マーケット(地元農産物直売会)が開かれます。
地元の食材を地元で消費することで無駄な輸送を減らしたのです。
先進各国でCO2排出削減がなかなか進まない中、ポートランド市では徹底して自動車の利用を抑えることで1993年以来22%もCO2の排出量削減を実現しています。
 
化石燃料に頼らない社会を作らなくてはならない、世界に先駆けて1970年代から訴え続けているアメリカのエネルギー学者でロッキーマウンテン研究所のエイモリー・ロビンス博士は、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「世界の石油の25%を消費するアメリカではその3分の1が人や物の輸送に使われています。」
「もし、小さな都市で上手に暮らせば無駄な輸送を減らせるのです。」
「私たちが口にする食料は平均して2000kmも離れた所から運ばれているんですよ。」
「都市を小さく保ち、近くのエネルギーや水、食料を利用した方が環境にも良く、健康的なうえコストも抑えることが出来ます。」
「そして、輸送で無駄に石油を使うこともなくせるのです。」
「生活に必要なモノを身近に手に入れることが出来る小規模な自立した社会ならエネルギーや資源を管理し易くなり、自然や景観を損ねることも無くなるのです。」
 
今、世界的に都市化による一極集中が急速に進んでいます。
日本でも東京などの大都市では現在も人口増加が進んでいる一方、地方都市は過疎化が進んでいます。
ところが、全体的な効率の観点からみると、小規模・分散型社会の方が良いとロビンスさんは提唱しています。
 
人口激減都市と言われる北海道・夕張市では市に分散している家や公共施設を集約したコンパクトシティを目指しているといいますが、今後夕張市と同じような取り組みは日本各地で求められると思います。
その際、単に小規模・分散型社会を目指すだけではうまくいかないと思います。
ポートランド市のように人々の暮らしの利便性、エネルギー効率、そして地域特性をうまく生かすことが重要だと思います。
 
また、世界レベルで考えてみても、輸送関連のエネルギー消費量の大きさから見て出来るだけ国単位、あるいは地方単位での自給自足を目指すべきだと思います。

 
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