2014年03月30日
No.2724 ちょっと一休み その430 『宇宙船地球号 その11 客室維持装置異変の対応策!』

昨年11月29日(金)から今年1月24日(金)まで4回にわたって「スペースシップ アースの未来」(NHK BS1テレビ)が放送されました。

そこで、以下のような流れでこれまでご紹介してきました。
 
1月17日(金)放送の「スペースシップ アースの未来」(NHK BS1テレビ)のテーマは「『客室維持装置』に異変あり」でした。
そこで、今回は水や大気といった生命に欠かせない環境を維持してきた客室維持装置異常の対応策についてご紹介します。

大気中に大量に溜まり続けるCO2、これを取り除くことが温暖化を解決する近道だと考える科学者たちがいます。
長い間、森や海に吸収されてきたCO2、ところが今自然環境が吸収出来る量の2倍以上のCO2が毎年排出されています。
これを人為的に取り除こうという試みが始まっています。
ジオエンジニアリング(気候工学)と呼ばれる手法です。
南極の海でドイツの国立海洋研究所が2000年から数回にわたってジオエンジニアリングの実験を行ってきました。
船には鉄を粉末状にした硫酸鉄が大量に積まれています。
これを海に投下します。
硫酸鉄を海に蒔くとそれを栄養源とする植物プランクトンが繁殖します。
すると、植物プランクトンが光合成をする過程でCO2を吸収します。
プランクトンの寿命は1ヶ月、深海に沈めばその分のCO2を封印出来るという考え方です。
 
2004年、植物プランクトンを大規模に発生させ、それを海底に沈めることに世界で初めて成功しました。
実験のリーダーを務めた、アルフレート・ヴェーゲナー極域海洋研究所のビクター・スメタチェック博士は、CO2を吸収したプランクトンは重いのでよく沈むといいます。
 
実験では14トンの硫酸鉄を海に蒔き、およそ4万トンのCO2を海水から取り除くことに成功しました。
スメタチェックさんはこれを南極の海全体で行えば、毎年排出されるCO2の5〜10%を削減出来るのではないかと考えており、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「10%といえば、大した量ではないかもしれません。」
「しかし、それを100年続ければかなりの量のCO2を取り除けるはずです。」
「短期間では大した効果は得られないので、最大限の効果を得るためには長期間にわたって鉄を蒔き続けることが大事なんです。」
 
スメタチェックさんの実験はその後ヨーロッパで大きな論争を呼び起こします。
地球温暖化の解決のためとはいえ、人為的に自然に手を加えることに国内外から疑問の声が上がったのです。
長期的な視野でみた時の生態系に与える影響が分からない、社会的な批判の高まりから2009年、研究所では新たな実験を行わないことを決定、計画は事実上頓挫しました。
 
ところが今、ジオエンジニアリングが再び世界で脚光を浴びています。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)では、今年1月末に発表した第五次評価報告書でジオエンジニアリングを本格的に取り上げることを決めたのです。
現在、世界で検討されているジオエンジニアリングは2種類あります。
大気中に溜まったCO2を取り除く手法と新たな温暖化を防ぐ手法です。
CO2を取り除く手法としては、スメタチェックさんが行った海に鉄を蒔く方法と土壌にCO2を閉じ込める方法があります。
一方、新たな温暖化を防ぐため太陽光を遮断する方法が検討されています。
硫酸などの微粒子を空から蒔く、そして宇宙に反射板を設置する方法などです。
 
IPCCは、ジオエンジニアリングにはリスクが伴い、賛否両論があるとしながらも温暖化対策として議論を始める段階に来ていると考えています。
 
IPCCのラジェンドラ・パチャウリ議長は、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「温暖化が臨界点を超え、気候変動の暴走を招くような事態はなんとしても避けなければなりません。」
「報告書でジオエンジニアリングを詳細に取り上げるのは初めてのことです。」
「世界的な関心が高まっていることがその背景にあります。」
「報告書には期待される効果だけでなく、コスト、懸念材料などについて分かる範囲で全て記載します。」
「政策決定者がジオエンジニアリングを今後の対応策とするかいなかの判断材料になることを願っています。」
 
40年前、著書「成長の限界」で地球の危機について警告を発したヨルゲン・ランダース博士は、今世界へ向けて新たなメッセージを発信しています。
2012年に発行した著書「2052」の中でランダースさんは、私たちの対応があまりにも遅いため既に気候システムに取り戻せないほどのダメージを与えてしまったと述べています。
それでも、失われたものの大きさを受け入れ、現実を見つめる必要があると強調しています。
 
ランダースさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「人間によって美しい地球の自然が次々と破壊されていく様を私は長年嘆いてきました。」
「しかし、友人からそのことを受け入れて生きていくしかないと言われたのです。」
「確かにこの状況に対して少しでも希望を持って生きていくためには現実を受け入れたうえで前に進むしかありません。」
「未だに持続可能な世界は実現出来ていませんし、これからも実現出来るかどうかは分かりません。」
「でも諦めずに努力し、少しずつでも前進する、そうしなければ何も変わらないのだと今はそう思っています。」
 
一人一人が行動すれば、たとえ小さくても変化をもたらすはずです。
水、そして大気、スペースシップ アースの豊かな自然は私たちにとってかけがえのないものです。
だからこそ、現実とどう向き合うのか私たちは問われているのです。
今が最後のチャンスかもしれないのです。

 
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