2014年03月21日
アイデアよもやま話 No.2717 地球が再び全球凍結を迎えたその時、人類は・・・
2月1日(土)放送の「137億年の物語」(テレビ東京)のテーマは全球凍結でした。 
つい先日、地球温暖化で世界の平均気温が上昇と伝えられたばかりで、世界の平均気温はここ100年で0.69℃上昇しているといいます。
原因は人類が大量に排出したCO2と考えられています。
ところが、およそ22億年前、地球全体が氷に覆われていたといいます。 
46億年といわれる地球の歴史で、少なくとも3回地球全体が凍ってしまった時代があったというのです。
この状態が全球凍結(スノーボールアース)です。
 
全球凍結の地球上では、全ての生物は死滅してしまうと思われます。
ところが、全球凍結のお蔭で生物が劇的に進化したと言われているのです。
凍り付いた地球が今の人類を生み出したかもしれないのです。
 
では、全球凍結とはいったいどんな状態なのでしょうか。
日本における全球凍結研究の第一人者、東京大学の田近 英一教授は番組の中で次のようにおっしゃっています。
「全球凍結というのは氷河期や氷河時代とは全く違う状況で、地球が丸ごと凍った状態といいます。」
「平均気温でいうとマイナス40℃という世界ですから、海の水も地表の水も全て凍ってしまうという世界です。」
「今から約22億年前、約7億年前、そして約6億5千万年前と、少なくとも3回地球が凍り付いたということが起こったと考えられています。」
 
全球凍結説は、1992年にアメリカ・カリフォルニア工科大学のカ−シュビング教授が提唱した新しい学説です。
大気の熱を保つCO2が減少したことで地球が急激に寒冷化したと考えられています。
北極と南極から拡大した氷の層が赤道付近へと広がっていきます。
そのころ、地球上では地球の表面が氷の層で覆われていきます。
急激な超寒冷化によって地球は海が存在しない氷の星へと変貌していったのです。
 
では全球凍結と氷河期との違いは何でしょうか。
氷河期の平均気温は現在よりも3〜5℃低い程度、しかも赤道に近い地域では雪も氷もありませんでした。
氷河期というのは部分凍結状態で、その時には例えば北米大陸でいうと今のニューヨーク付近まで氷が達していたと考えられています。
 
さて、現在は氷河時代の氷期(氷河期)と氷期(氷河期)との間の間氷期と言われています。
現在の地球は氷河期と同じように北極と南極に氷がある部分凍結状態ですが、氷の割合が少なく、比較的温暖なのです。
 
対照的に恐竜が繁栄していたおよそ1億年前は、平均気温が現在より6〜15℃高かったといいます。
この地球は氷が全くない無凍結状態でした。
全球凍結と正反対の状態です。
恐竜が栄華を極めた時代、地球は氷が全くないほど温暖な世界だったのです。
 
全球凍結が始まった時期は火山活動が停滞して大気中のCO2の供給量がおよそ4分の1以下にまで減少してしまったのではないかと考えられています。
寒冷化した地球は氷で覆われ始めます。
氷は太陽の光をより跳ね返すので寒冷化は益々進み地球はどんどん氷で覆われてしまうのです。
こうして地球全体が凍結してしまう、これが全球凍結で、平均気温マイナス40℃の状態が数百万年も続いたといいます。
 
では、どうして全球凍結の状態が分かったのでしょうか。
田近教授は、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「ドロップストーン(氷河堆積物)と言うんですけど、これが決定的な証拠になります。」
「(ドロップストーンは)世界中で発見されています。」」
「しかも、その中には当時の赤道域で作られたドロップストーンが発見されて、それが当時の地球が赤道まで氷で覆われたという証拠になっています。」
 
ドロップストーンとは、地層の間に挟まっている本来は無いはずの岩石のことです。
通常、陸から離れた氷山には陸の岩石が取り込まれています。
この岩石から落ちたものがドロップストーン、これが氷で覆われた大陸があった証拠になるのです。
 
赤道まで凍り付いた全球凍結、この過酷な環境で生物はどのように生き延びたのでしょうか。
数百万年間続いたといわれる全球凍結の時代でも火山が活動していました。
この火山活動によって大気中に放出されたCO2は蓄積されていたのです。
そして、気温が零度を超えると、赤道あたりから氷が溶け始めます。
こうして全球凍結状態は終わりを迎えました。
生物はこうした全球凍結の時代に絶滅寸前の大ピンチに追い込まれましたが絶滅しませんでした。
 
約6億5千万年前の全球凍結の時代にも火山は活動していたので地表には温泉のように氷が溶け出していた場所があったと考えられています。
ここで細々と生物が生き延びていたのです。
氷が溶けた地球は生物に奇跡的な進化を遂げさせることになりました。
約22億年前、最初の全球凍結の起きた後には真核生物が誕生しています。
ちなみに、真核生物とは細胞内に膜で覆われた細胞核やミトコンドリアなどを持つ生物、つまり私たち人類につながる生物です。
そして、約6億5千年前の3回目の全球凍結の後には複雑な体の仕組みを持った動物が誕生しました。
 
では、なぜ全球凍結の後に生物は劇的に進化したのでしょうか。
田近教授は番組の中で次のようにおっしゃっています。
「全球凍結の直後に大気中の酸素濃度が急激に増加したことが知られていて、生命はおそらく大気中の酸素濃度が上がった新しい環境に適応するかたちで大きな進化したをしたんじゃないかと。」 
「生物の大部分が絶滅しても一部の生き残った生物が大きな進化を遂げるという、その繰り返しが現在に至る生物の進化の歴史なのかもしれません。」
 
3度目の全球凍結の直後に地球が生み出した奇跡、それは大量の酸素だったのです。
そして、酸素に適応した小さな多細胞動物が誕生し、やがて目に見える大きさの動物へと進化を遂げました。
地球は命を育む海を取り戻しました。
新たな海で動物の時代が幕を開けたのです。
 
では、なぜ大量の酸素が発生したのでしょうか。
ネット検索の結果、光合成細菌の大繁殖によって、現在の10 万分の1という低酸素状態から一気に現在の酸素濃度レベル近くまで復帰したという説があります。
 
更に、1億年経つとカンブリアの大爆発が起こりました。
この約5億年前のカンブリア大爆発によって、地球上の動物は一気に多様化しました。
カンブリアの動物たちには食う、食われるという関係が生まれました。
これにより自然淘汰と進化は更に加速していくのです。
 
こうしてみてくると、今、地球温暖化が大きな問題として世界的に注目されていますが、実は長期スパンでみると間氷期にあり、やがて氷期(氷河期)を迎えるのです。
そして、更なる長期スパンでみれば地球誕生以来3回目の全球凍結から約6億5千万年経っているので4回目の全球凍結がいつまた到来する分かりません。
 
では、もしはるかかなたの将来に全球凍結が到来した時、どのように人類は対応しているでしょうか。
その時代の人類は氷の下で暮らしているのか、それとも氷上で暮らしているのか、あるいは以前ご紹介したグリーンフロート構想のように空中に暮らしているのか関心のあるところです。
いずれにしても、その時代には全てのエネルギーは再生可能で、発電量が天候に左右されず、今の太陽光発電や風力発電とは全く違った方式のものになっているでしょう。
また、食料も植物工場のようなところで全て作られていると思います。
そして、水についても各家庭内にある浄水装置で雨水やお風呂の残り湯などから飲料水へとリサイクルされているのではないかと想像されます。
また、家庭から排出される生ごみについても、各家庭内にある処理機で微生物処理され、肥料へとリサイクルされ家庭菜園で使われているのではないかと想像されます。
要するに、私たち人類の遠い未来の子孫はどんな環境においても暮らしていけるだけの完全に循環型の持続可能な社会を作り上げていると思うのです。
 
このような遠い将来のことを考えて、その対応を先取りしたアイデアをかたちに出来れば、きっとその時代の人類から感謝されると思います。
現在の生活向上にばかり目を奪われることなく、たまにはこうした将来に目を据えて物事を考えることがあってもいいのではないかと思うのです。

 
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