2013年12月26日
アイデアよもやま話 No.2644 バングラディッシュの縫製工場にみる世界的な最低賃金規制の必要性!
ユニクロなどのファーストファッションはとても安くて品質もそれなりに良いので私も最近衣類を購入する時にはよく利用しています。
こうした商品のタグには生産国が記されていますが、100%といっていいほどが途上国です。
そうした中、11月30日(土)放送の「ドキュメンタリーWAVE」(NHKBS1テレビ)のテーマは「あなたのTシャツはここから来ている 〜低賃金に声を上げるバングラディッシュ〜」でしたのでご紹介します。 
 
今年10月、バングラディッシュの首都ダッカでは縫製工場で働く人たちが待遇改善を叫び、工場に怒りをぶつけていました。
怒りの引き金となったのは、今年4月の大惨事です。
縫製工場が入っていたビルが倒壊し、3000人が生き埋めとなり1100人以上が亡くなりました。
犠牲者の多くは海外のファーストファッションを作っていた労働者でした。
ビル崩壊の原因は本来5階建てだったビルを8階に違法に増築し、強度が落ちていたところに2000台のミシンが一斉に動いた振動だと報じられました。
事故の前日には労働者が建物のひび割れを見つけ危険を訴えていました。
ところが、注文に遅れることを嫌った工場経営者はその訴えを無視し、操業を続け大惨事を招くことになったのです。
 
この事故をきっかけに、労働者が押し殺していた不満が一挙に吹き出しました。
法律で最低賃金は月3000ダカ(3900円)と決められていますが、下請け、更には孫請けの工場ともなるとそれ以下で働く人も多いといいます。
労働環境の改善と賃上げを求めて抗議はエスカレートしていきます。
 
ところが、経営者側は安全面の改善面こそ約束したものの賃上げには応じていませんでした。
仕事が無かったこの国で仕事を作ったのは自分たちだと考えていたのです。
 
世界のアパレルメーカーがバングラディッシュに求めてきたのは安さと流行の変化に対応出来る速さでした。
ダッカの人口は1500万人、多くが貧困層で低賃金で働く人はいくらでもいたのです。
勤勉な国民性にもピッタリの仕事でした。
2000年代に入ると、中国の人件費高騰などもあって、ファーストファッションと呼ばれる格安商品の注文が急増、低価格でかつ高品質が評価され、5年前は世界第7位だった輸出額が今では2位に躍り出ました。
 
ところが、注文が増える一方で低価格競争を戦うメーカーから単価の切り下げを迫られるようにもなっています。
ある工場経営者は、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「このTシャツは3.5ドルで買い取られて、ヨーロッパでは最低でも40ドルで売られている。」
「しかし、アパレルメーカーは私たちに3ドル〜2.5ドルしか払ってくれない。」
「欧米のメーカーは少しは労働者のことも考えた金額にして欲しいものです。」
「いつも買値を上げてくれと頼んでいますが、メーカーは応じてくれません。」
「これが現実です。」
「私たちは闘いながら生き残るしかないのです。」
 
バングラディッシュは中国に次ぐ世界第2位のアパレル大国に急成長しています。
日本への輸出もこの5年で20倍に急増しています。
そして、自社工場を構える日本企業も増えています。
 
成長の原動力は月収約4000円、中国の3分の1という低賃金で働く労働者です。
事故がその実態を白日の下に曝したのです。
劣悪な労働環境、法律では認められていない長時間労働や低賃金、国際世論は奴隷労働だと激しく非難しました。
なお、アパレルメーカーは価格の25%、工場経営者は8%を利益としているといいます。
 
こうして、ダッカ郊外のある地区で80もの縫製工場が閉鎖しているという報道が流れていて、労働者の抗議行動がエスカレートし、工場に危害が及ぶと経営者が恐れているという状況になりました。
そうした中、11月29日、暴徒化した労働者によって縫製工場が放火され全焼しました。
一連の騒動によってこの3日間で少なくとも21人が死亡、数百人がけがをしました。
今もダッカの緊張は続いています。
 
最低賃金をめぐる攻防は、労働者側は8000タカ、それに対して経営者側は4500タカと大きく開いていましたが、11月21日、政府が仲介に入り、月収5300タカ(6900円)で決着しました。
77%の賃上げす。
 
私たちの生活になくてはならないものになった低価格のファーストファッションですが、実はその安さはこのような低賃金の途上国の労働者によって支えられているのです。
このような実態が分かってくると、いくら安いからと言っても単純には喜べなくなってきます。
やはり、購入者が安く購入出来るというメリットだけでなく、それを生産する途上国などの労働者にも日々の暮らしがそれなりに出来るというメリットが必要です。
 
ではどのような仕組みになれば、この問題を解決出来るのでしょうか。
私なりにちょっとだけ考えてみた解決要件を以下にまとめてみました。
・国際的な通貨の為替や各国の生活水準に照らして、各国の最低賃金を国際機関が客観的に定め、それを各国にガイドして義務付ける
・生産者は商品のタグにその旨(マークなど)を記す
・ガイドを守らない企業については、遵守を求め、同時に企業名をネット上などに公表する
 
一部の企業のみが好意的に途上国での賃上げに取り組もうとしても国際的な価格競争では不利になってしまうので、なかなか積極的には動けません。
そこで、国際機関により妥当な各国の最低賃金を定めてもらい、各企業は進出先の途上国でそれを守るというのが狙いです。
残念ながら、各企業に任せておいては途上国での労働者の賃上げはどうしても後ろ向きになってしまうのです。
でも、こうした安心して暮らせるだけの給料を払うことにより、労働争議も格段に減り、企業への忠誠心も高まるはずですから、その分生産性は間違いなく高くなることが見込まれます。
ですから、各企業がこうした同じハードルの元で競争すれば、次から次へと賃金の安い途上国を求めて工場を建設するということも激しくなくなり、途上国の安定した労働市場の確保も維持出来ると期待出来るのです。 

 
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