2013年11月30日
プロジェクト管理と日常生活 No.308 『無印良品にみる標準マニュアルの威力!』
9月19日(木)放送の「カンブリア宮殿」(テレビ東京)で「無印良品が売れる秘密!」をテーマに取り上げていました。
無印良品の取り組みがプロジェクト管理の観点からもとても優れていると思いましたのでご紹介します。
 
無印良品は1980年、スーパー西友のプライベート・ブランド(PB)として誕生しました。
そのコンセプトは”わけあって、安い”です。
無駄を省き、素材そのものの良さを追求、更に製造工程を見直すことで低価格を実現し、40アイテムからスタートしました。
やがてファッションやインテリアにも進出すると、シンプルで素材を生かした商品コンセプトがおしゃれと支持され、ファンを拡大していきました。
誕生から33年、今では国内382店舗を展開、女性を中心に幅広いお客の心を掴み、年間6500万人が購入しています。
売り上げも右肩上がりで2012年度の売り上げは1883億円、経常利益は過去最高の197億円に達しています。
 
以下は無印商品が売れる理由です。
,い弔隆屬砲進化
  日常的な気づき、すなわちお客の要望を取り入れて商品をこっそり進化させている
地球にない色はダメ
  無印商品はアフリカなどの農家を支援するため、オーガニックコットンを栽培してもらい買い上げている
17万件のリクエスト
  商品開発に生かされるのがお客からの年間17万件のクレーム・要望である
  また、お客の声なき声を探すため、従業員が一般家庭を観察にいっている
 
こうした無印良品を手がけているのは株式会社良品計画(本社:東京・東池袋)です。
その先頭に立つのが松井 忠三会長ですが、松井さんが社長に就任した当時、良品計画はどん底にありました。
創業以来初めて38億円の赤字を計上、原因は人気にあぐらをかいた慢心と放漫経営でした。
 
松井さんは一つのキーワードを掲げて改革に乗り出し、V字回復を成し遂げました。
そのキーワードとは「当たり前のことを当たり前にやること」です。
 
松井さんは番組の中で次のようにおっしゃっています。
「昔は100人店長がいると2人くらいは卓越した職人みたいな店長がいて素晴らしい店を作るんですよ。」
「であと6割くらいの店長は標準以下の店しか作れない。」
「この2人の天才は職人ですから(その技術を)広げていくことが出来ないんですよ。」
「一番大事なのはみんなが同じようにやってくれること。」
「お客さんの満足度だと9割くらいの商品知識と販売技術と陳列技術でお店を作る、これがやっぱりお客さんに対して一番大きなベースですね。」
「ここがぶれないということが一番大事ですよ。」
 
松井さんは商品コンセプトをシンプルで品質重視という原点に立ち返らせました。
その一方で、個人の勘や経験に頼らない組織作りに取り組んでいきました。
こうして、松井さんは一つのキーワードを掲げて改革に乗り出し、V芓回復を成し遂げました。
そのキーワードは「当たり前のことを当たり前に出来る仕組み」です。
 
その最大の武器は店内業務の「ムジグラム」といわれる標準マニュアルです。
お店の仕組みがこのマニュアルを開くだけで全て分かるのです。
「ムジグラム」とは、松井さんが作った無印良品の店舗運営のためのマニュアルです。
全部で13冊、なんと2000ページもあります。
接客の基本からレジ業務・経理、商品管理など、そして危機管理までこれに従えば全てが効率的に出来る仕組みになっています。
 
この標準マニュアル「ムジグラム」には以下の3つの特徴があります。
(1)やる気が出る4つの魔法
   どんな仕事も冒頭に「何」、「なぜ」、「いつ」、「誰が」の4つが必ず写真付きなどで分かり易く書かれている
(2)事務作業はお客の前で
   マネージャーはレジの後ろにオフィス機能を持たせており、常にお客の状況を見てスタッフをコントロール出来るので、作業効率を含めて大きなメリットがある
   例えば、レジの混み具合により売り場のスタッフをレジに呼んでお客を待たせないようにしている
   こうした店舗業務の効率化でスタッフ1人当りの売り上げは年間70万円もアップした
(3)締め切りを見える化
   店舗だけでなく本社でもマニュアルで効率化が図られている
   各自の仕事に締め切りを設け、それを各部署に置かれているボードに張り出すことで共有、しかも○×の記入欄もあるので遅れた場合部署全体でフォロー出来る仕組みになっている
 
松井さんは、この「ムジグラム」について番組の中で次のようにおっしゃっています。
「この「ムジグラム」と言う仕組みは標準化して見える化して、日々の業務を必ず革新し続けていく、これが大きな仕組みになっているんですね。」
「その仕組みの集大成が「ムジグラム」ということになっています。」
 
「入社してくるとこれでしか教育されないんですよ。」
「従って、従業員の常識はこの中に入っている内容が会社の基準なんですね。」
 
「10あるうちの9ぐらいは決まっていて残りの1ぐらいが創意工夫で変わっていくと、そういう感じなんだと思いますね。」
 
こうして、松井さんの作り上げたマニュアルで効率化を図り、赤字からV芓回復を果たしたのです。
 
無印良品では進出している中国で確実にファンを増やしており、店舗数を拡大しており、年内に100店舗まで増やす予定です。
中国での躍進の秘密も中国語版「ムジグラム」で教育、サービスレベルを日本国内と同じようにしていることにありました。
そして、「ムジグラム」による店舗運営をしているか、およそ90ある項目を一つ一つ中国本部のスタッフによる抜き打ち監査で各店舗はチェックされるのです。
 
「ムジグラム」の仕組みは世界共通で、今や海外の無印良品は23の国と地域で228店舗で展開されています。
 
なお、無印良品には更に躍進の秘密があります。
それはモノづくりのコンセプトにあります。
無印良品のモノづくりは、「ゼロから新しいモノを作り出す」のではなく、元々昔からその地域で長く使われてきた日用品をを探し出してきて今の生活に合うように仕立て直すという活動です。
その中には、チェコのおばあさんが代々編み続けてきた手編みの靴下があります。
かかとが直角で履き心地が良いのが特徴で、その特徴を生かした日本製商品「足なり直角靴下」が無印良品で今年間900万足売るメガヒットとなっています。
創業時からの伝統の中から良品を見つけて今に生かす、これも無印良品が支持される理由なのです。
 
さて、ここで無印良品の仕事への取り組みをプロジェクト管理の観点から整理してみます。
(1)標準化
  無印良品では新入社員から年配社員まで標準マニュアル「ムジグラム」をベースに業務をこなしている
(2)進捗管理
  業務の進捗具合を見える化して進捗管理を行っており、遅れた場合部署全体でフォロー出来る仕組みになっている
(3)役割分担が明確化されている
   どんな仕事も「何」、「なぜ」、「いつ」、「誰が」の4つが必ず明確に「ムジグラム」で文書化されている
(4)プロセスの改善
   お客からのクレーム・要望、あるいは従業員が一般家庭を観察にいって、お客の声なき声を探し出し、継続的にそれを商品の進化につなげている
   「ムジグラム」に則っての業務が基本ですが、創意工夫により継続的に改定されている
(5)定期的業務監査
  第三者である本部のスタッフによる抜き打ち監査で各店舗が「ムジグラム」に則って業務を進めているかのチェックを行っている
 
プロジェクト管理における管理項目には上記の他に計画管理、課題管理、問題管理、リスク管理、テーラリングなどがありますが、無印良品のしっかりした管理体制からみるとこれらの管理も包含したかたちで管理されているものと想像されます。
 
さて、最後に特に強調したいことがあります。
プロジェクト管理はその手法に則ってただ管理していればうまくいくというような甘いものではありません。
管理者層をはじめ利用する立場の人たち全員が個々の管理項目の狙いをしっかりと理解しており、常日頃問題意識を持っていることが大事なのです。
そうでなければ、これらの管理手法を導入する前よりも返って手間がかかり非効率になってしまいます。
同時に、継続的に業務改善を行い、それを標準マニュアルに反映することが大事です。
そうしなければ、いずれ標準マニュアルは陳腐化してしまう運命にあるのです。

 
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