2013年06月15日
プロジェクト管理と日常生活 No.284 『道交法改正成立にみる法律改正の望ましい方向性!』
車の運転に支障を及ぼす可能性のある病状を申告せずに、免許を取得・更新した場合の罰則新設などを柱とする改正道交法が6月7日、衆院本会議で可決、成立したと報じられています。
悪質な自転車運転や無免許運転の罰則強化も盛り込まれ、公布後半年〜2年以内に順次施行されます。
その大きなきっかけとなったのは、2011年4月に栃木県鹿沼市で、服薬を怠り、てんかん発作で意識を失ったクレーン車の運転手が起こした悲惨な暴走事故といいます。
子ども6人が不幸にしてこの事故の犠牲となり亡くなりました。

せめてもの救いになるのが今後の再発防止策となる今回の道交法の改正成立です。
今までは事故が起きてからしか処罰されなかったのが、事故を起こす可能性の状態でも処罰されるようになったのです。
突然のてんかん発作で意識を失った運転手による暴走事故では防ぎようがありませんし、犠牲者の気持ちを察するだけでもたまりません。

さて、いろいろな事件や事故に対応して罰則が設けられていますが、プロジェクト管理の観点からみると大きく2つに分かれます。
1つは事故や事件の発生前、すなわち事故や事件発生の防止です。
自動車の事故防止のために「道路運送車両法」で定められている「保安基準」に適合しているかどうかの車両検査、あるいは銃砲刀剣類の所持を原則として禁止し、これらを使った凶悪犯罪を未然に防止することを目的とする銃刀法(銃砲刀剣類所持等取締法)が有名です。
もう1つは事故発生後の被害に応じた罰則です。
感覚的には、後者の罰則の方が圧倒的に多いような気がします。

そこで、最近の罰則改正の動きをみていて望ましいと思うのは前者の事故や事件の防止を目的とした改正が目立つことです。
例えば、6月12日に株式のインサイダー取引を防止する狙いで改正金融商品取引法が参議院本会議で可決・成立しました。
これまで処罰の対象になっていなかった情報を漏らした側にも刑事罰や課徴金が課せられることになります。
ちなみに、今回の法律改正のきっかけになったのは、大手証券会社から上場企業の増資に関する情報が漏れ、株式のインサイダー取引が行われていたことが去年相次いで発覚したことでした。

このように、実際に事件や事故が起きることを防止するための罰則こそが法律の本来あるべき姿だと思うのです。
そして、事故発生後の罰則はそれでも起きてしまった場合の補足的な位置付けであるべきなのです。
ですから、法律を制定する側の方々には、株式のインサイダー取引のように実際に何度か同じような事件が起きてから法改正するのではなく、事前にリスク管理の観点からいろいろと想像を巡らせてリスクが発生する可能性を無くすための事件・事故防止のための罰則を設けて欲しいと思います。
そして、それでも実際に事件や事故が起きてしまった場合には速やかに再発防止策として法改正に取り組むという姿勢でいただきたいのです。

 
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