2013年05月17日
アイデアよもやま話 No.2453 参考にすべき空き家の活用!
アイデアよもやま話 No.2223 広がるリサイクルからアップサイクルへの動き!などで今まで何度かただリサイクルするのではなく、そこに付加価値を付けるアップサイクルについてお伝えしてきました。
そうした中、4月16日(火)放送のガイアの夜明け (テレビ朝日) は「空き家再生に秘策あり!」をテーマにした、空き家の素晴らしいアップサイクルについて取り上げていたのでご紹介します。

今、日本全国で約756万戸の空き家があると言われています。(2008年総務省調べ)
空き家率も年々上昇し続け、1968年には4%だったのが今や13.1%、10軒に1軒以上が空き家という状態で2030年には25%にもなるという予測もあります。
原因の一つは少子化高齢化による人口減少ですが、1960年代から1980年代にかけての住宅ブームの中、当時の若い夫婦たちが次々にマイホ−ムを取得し、今そうした家にその子どもたちの世代があまり住んでいないということもあります。

空き家が増えていくと、町の治安やイメージの悪化などが心配されます。
そんな中、新たな視点で空き家問題を解決しようとする動きがあります。
不動産を仲介するインターネットサイト「東京R不動産」です。
このサイトは株式会社スピークが運営しており、ここには設計・建築と不動産仲介のスタッフ30人ほどが在籍しています。
平均年齢は30歳、若者の斬新な視点であまり見向きもされなかった不人気な古い物件の”光るところ”を見つけて再生し、空き家の仲介を次々に成功させています。

スピーク共同代表の古里 裕也さんは番組の中で次のようにおっしゃっています。
「新築がいいと言われるのは一般的なんですけど、(木造の古い物件は)僕らから見るとむしろ古いのが味であるし、築年数があればあるほど希少だとも置き換えることも出来るので格好いいっていうか商品になるっていうか。」

番組ではスピークにより老朽化した古い家が再生され、とても魅力的な家に生まれ変わった物件が紹介されていました。
私もこんな居住空間なら住んでみたいと思いました。

一方、地方では過疎化が進み、
徳島県神山町でも昭和30年頃には人口約2万人でしたが、現在は約6000人と3分の1以下にまで減少しています。
町内には老朽化した古い家が多く、それらの多くが空き家となっていました。

ところが今、この町に異変が起きています。
50年以上常に転出者の方が転入者より多かったのですが、2011年度に転入者が12人上回る事態が起きました。
これは地方の過疎地域では異例のことです。
2008年以降、移住者が次々と押し寄せているのです。

不動産仲介会社がない神山町では
大南 信也さんが代表を務めるNPO法人グリーンバレーが空き家を紹介しています。
斬新な方法で移住者の受け入れを促進したところ、今、都会からの移住者が殺到しており、移住を待つ人たちが100組以上もいるといいます。

大南さんは神山町で生まれ育ち、家業の建築会社を継ぎましたが、生まれ故郷から次々と人が出ていき、過疎化の一途をたどる現実に危機感を覚えました。
このままではいけないと、家業を妻に任せて町を活性化するために立ち上がりました。

まず地元の仲間たちと始めたのはアートで町おこしをすることでした。
1999年以来、毎年国内外のアーティストを招いて芸術作品を作ってもらってきています。
すると、思わぬことに滞在したアーティストの中から町内でそのまま移住したいという人たちが年に一人ずつくらいぽつりぽつりと現れてきたのです。
その時、大南さんは古民家を紹介しました。
そして、町の空き家を活用して本格的に移住支援を行えば町が蘇るのではないかと閃きました。
こうして、町おこしの活動を共にしてきた仲間たちとNPO法人グリーンバレーを設立したのです。

積極的に移住者を呼び込むため、今では町役場も様々な支援をしています。
例えば、中学校いっぱいまでは医療費タダ、そして二人目の子どもからは保育所がタダという具合です。
町役場は予算を少子化対策に重点的に割いています。
こうした手厚い保護もあり、神山町にはカフェを開業した人や建築家、広告デザイナーなどが移住してきています。
そして、移住者の中には自分たちの住みやすいように古民家をアップサイクルしているところもあります。
というのは、家が古くなりすぎて、そのままの状態では住めないので大家さんも改築を認めているからです。
こうして、空き家プロジェクトを開始した2008年以降およそ90人が新しく町民になりました。

今では全国各地から100件以上の移住希望者が殺到しています。
これに対して、神山町では移住希望者を先着順に受け入れるのではなく、独自の手法を採っています。
手に職を持つなど経済的に自立出来る人、そして少子化対策のため子どものいる家族を優先して空き家の紹介を行っています。

こうした手法について、大南さんは番組の中で次のようにおっしゃっています。
「こういう過疎の町に受け入れ側として仕事を準備してあげるのは不可能にほぼ近い。」
「そういうことを考えれば、やはり自分自身が何かを持っている人の方が(生活が)成立しやすい。」

また、訪れた移住希望者に対しては次のようにおっしゃっています。
「町がいいわけではなく、多分入ってきた人とか地域の人たちが町をつくっているという感じだと思います。」

神山町では移住者を呼び込むだけでなく、定着させることにも力を注いでいます。
例えば、家のリフォーム希望者に信頼出来る業者を紹介したり、ボイラーが壊れた時に相談に乗ったりと生活全般の世話人も務めているのです。
こうした世話人の存在が移住者たちの定住につながり、それが評判を呼び、神山人気の理由となっているのです。

神山町の空き家プロジェクトの仕掛け人、大南さんは空き家を問題視するのではなく、大切な資産として捉えています。
そして、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「今自分たちの持っている資産(空き家)を出来るだけ有効に活用することによって町がづっと続いていける状態を作っていきたいわけです。」

”空き家は大切な資産”であるという考え方はとても前向きで素晴らしいと思います。
空き家に限らず、そのモノとしての”良い面”を捉えて全面に押し出せばアイデア次第で今までにない素晴らしいモノへと変身出来るのです。

私の実家のある千葉県の外房の町でもどんどん過疎化が進んでいます。
 
そして、そろそろ築100年になる私の実家もスピークスのような建築業者にお願いしたらどんな家に再生されるのだろうと想像を巡らしてしまいました。

狭い住環境の中で暮らす人たちが多い中、約756万戸もの空き家が存在していることはとてももったいないと思います。
国内各地でスピークのような古民家再生が進められれば、そしてより多くの過疎地で徳島県神山町のような取り組みがなされれば、多くの人たちが素晴らしい住環境の中で、しかも低予算で暮らすことが出来るようになり、省エネ対策、あるいは過疎地対策にもなるのです。 

 
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