2013年05月16日
アイデアよもやま話 No.2452 3Dプリンターは現在の”魔法の箱”!
通常のプリンターが絵を描くのと同じように立体を造形してしまう3Dプリンターについて何度かお伝えしてきました。
そうした中、4月14日(日)放送の「サイエンスZERO」(NHKEテレ東京)で3Dプリンターの最前線をテーマに取り上げていましたのでご紹介します。

3Dプリンターは最初の製品が25年ほど前に発売されました。
企業などが新製品を開発する時に試作品を設計図からかたちにする目的で開発されたのです。
ところが、次第に欲が出てきて車のボディの一部なども作り、F1などレースの世界で実際に3Dプリンターで作った部品が使われるようになりました。
ちなみに、この3Dプリンター、最初にアイデアを出したうちの一人は日本人技術者、児玉 秀男さんといいます。

この3Dプリンター、アメリカのオバマ大統領の番組の中での演説にもあるように、今や世界中でモノ作りに革命をもたらす存在になりつつあるようです。
超小型・高性能のコンピューターやスカスカの構造なのに何十kgもある重さの物体を支える謎の物体を作れたり、更には水を吸い込む不思議な金属まで作れてしまいます。
今までの技術では絶対に作らなかった新しいモノを次々に生み出しているのです。
ですから、3Dプリンターはまさに現在の”魔法の箱”なのです。

ビジネスの観点からも、多品種少量生産が可能なので従来はビジネスとして成り立たなかったモノでも3Dプリンターを使うことにより製品化出来るのです。
こうした背景もあって、去年11月には3Dプリンターを集めたショールーム「CUBE」が渋谷にオープンされました。
こちらには最新型の1000万円のモノから10万円の低価格品まで展示されています。

使用例として、例えば全身を特殊なスキャナーで読み取り、その精密な3Dデータを
3Dプリンターで出力すると、姿かたちが忠実に再現された型が出来ます。
そこへ好きな味のゼリーを流し込めばオリジナルのお菓子が出来上がります。

一方、趣味が高じて、既に3Dプリンターを個人で購入した人も現れています。
この人は、奥様の使っているメガネのツルの片方が壊れてしまい、補修のパーツがなく捨てるところだったのですが、3Dプリンターでツルの部分だけを作って取り付けたといいます。
そして、今作っているのはスマホのケースです。
設計図をパソコンで作り、そのデータを元に3Dプリンターで作れば簡単にオリジナルケースの出来上がりです。
更に、古くなった車のワイパーカバーは20年以上前に生産中止になっているため部品を手に入れることが出来ずにいたのですが、3Dプリンターで簡単に作ることが出来ました。
他にも子どものおもちゃや自分で工夫したアイデア雑貨など作ったオリジナルグッズは30種類以上といいます。
3Dプリンターでモノを作るにはちょっと時間がかかりますが、それでも寝る前に3Dプリンターをセットしておけば、朝までには出来ているのです。

このように、3Dプリンターは個人によるモノ作りを飛躍的に便利にしてくれます。
ですから、アイデア次第で個人でも今までどこにも存在しなかったようなモノまで作れるようになったのです。
アメリカでは既に3Dプリンターのユーザーのコミュニティサイトでは何百人ものユーザーが自分の作った作品(スマホのケースや腕輪などのアクセサリー、ランプシェード、更には服や靴などまで)を公開・販売しています。
それだけでなく、メガネなどの3Dデータのダウンロードサービスもあります。
ですから、ダウンロードすれば欲しいモノを自宅の3Dプリンターで簡単に作れるのです。
今、アメリカではこうしたサイトがいくつも登場しています。

一方、産業技術総合研究所(つくば市)では金属でも印刷出来る3Dプリンターの開発を進めています。
3Dプリンターの中に入っているのはチタンの粉末、ここにレーザー光線を当てて1200℃以上に加熱、黒く焼き固めていきます。
その上にまた薄く粉末を載せてレーザーを当てる、の繰り返しです。
レーザーを極めて精密にコントロールする技術によって可能になりました。
こうして出来たのは、複雑なかたちをしたチタンのネジです。
その精度は0.1ミリといいます。
更には、目には見えない細かい無数の穴が空いており、水を吸い込む金属まで作っています。
今までこのような金属を作ることは出来ませんでした。

金属を扱えるようになると、3Dプリンターの可能性は一気に広がります。
3Dプリンターのベンチャー企業を立ち上げた村田 和広さんは電子部品を印刷して作る研究をしています。
そのために開発されたのが世界で最も細かい印刷が出来る3Dプリンターです。
ノズルの先からは溶かした銀が吹き出しています。
印刷出来る細かさは驚くことに2000分の1ミリといいます。
液体にした金属の粒子をスプレーのように吹き付けます。
ノズルから出ると一瞬で固まるため立体的に積み上げることが出来るのです。
この方法で作られたのが太さ500分の1ミリの極小の突起、電極として働きます。
従来よりも大量に電極を並べることが出来るため、電気の流れやすさが格段にアップ、その結果コンピューターが高性能になります。

更に、パーツごとに層を分けて吹き付ければ電子部品を丸ごと印刷して作ることも可能になります。
こうして、将来はテレビやパソコンを3Dプリンターで作ることを目指しています。

村田さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「従来、電子部品を作るには巨大な工場が必要だったのが、この装置を使えば机の上でいろんなモノを作れるようになります。」

金属さえも自由に加工出来る3Dプリンター、モノ作りの可能性をどんどん広げています。
既に血管などが通る立体的な穴があいている人工的な骨、あるいは材料とする砂や土を接着剤で固めての家作りまで3Dプリンターの可能性は広がっているのです。
更には3Dプリンターをロケットで月まで運び、月面の砂などを材料にして3Dプリンターで月面基地を作るという計画まであるといいます。
これなどは大幅なコストダウンにもつながります。

こうしてみてくると、3Dプリンターには使い方次第で無限の可能性があるように思えてきます。
世界中のサイトから自分の欲しいモノを探してその3Dデータをダウンロードしさえすれば、簡単に自宅でも作れるというのは今までに無い全く新しいビジネスモデルであり、これによって新たなライフスタイルが生まれます。
また、3Dデータをちょっと編集すれば自分なりのカストマイズも簡単に出来てしまうのです。
こんなことは今までは不可能でした。

ところが、アメリカでは既に3Dプリンターの弊害が出ています。
実際に発射出来る銃のパーツの設計データがネット上に公開される事件が起きたのです。
ということは、銃のパーツに限らず設計データさえ手に入れば何でも自宅の3Dプリンターで作れてしまう時代が到来したということになります。
そして、大変困ったことに一旦公開されてしまったデータは今や世界中のどこかのだれかによりアクセスされ、人々の関心を集められそうだと次々に転載されてしまうのです。

ですから、歯止めがかからないのです。

どんなモノにも光と陰があるのです。
使い方次第で便利になったり、社会に弊害をもたらしたりします。
ですから、全ての人には反社会的なモノを自ら作れても作らないというモラルが強く求められるのです。
3Dプリンターという今までに無い、自由に簡単に作れる加工ツールを近い将来世界中の多くの人たちが手に入れるようになるのですから、是非自分のため、社会のために有意義なモノを作り出して欲しいと願います。

 
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