2013年03月23日
プロジェクト管理と日常生活 No.272 『首都圏沿岸の大地震・大津波で日本の電力インフラは壊滅的打撃!?』
自宅からクルマで10分足らずのところにJパワーの横浜磯子火力発電所があります。
こちらの発電所は見学が自由に出来て、その都度説明員の方が懇切丁寧に説明してくれます。
そこで、ちょっと時間の空いた時に何度か行ったことがあります。

福島第一原発事故の発生以来、日本の電力のほとんどは火力発電に依存しています。
ですから、もし、原発に次いで多くの火力発電が稼働停止になったらその時こそ本当に日本の電力危機到来なのです。
そこで、前回、今年に入って行った時、以前から気になっていた質問を説明員に投げかけました。
この発電所は大津波が来た時、何メートルまで耐えられるか、という質問に対して、3mまでは大丈夫ということでした。
また、万一津波の被害に遭った時には復旧まで半年くらいはかかってしまうといいます。
この回答を聞いて、2011年の東日本大震災の時の津波の高さからして、直感的に想定している津波の高さ3mは低すぎるのではないかと私は思いました。
そして、地図で確認したところ、全国的に多くの火力発電所が原発同様に海沿いに建てられていることが分かりました。

そうした中、3月10日(日)放送のニュース(NHK総合テレビ)でやはりという思いを強くしました。
巨大地震が想定されている南海トラフ周辺の海底地形を専門家が詳しく分析したところ、南海トラフの外側に活断層の可能性がある地形が新たに見つかりました。
既に見つかっている活断層と合わせると、M8を超える巨大地震が発生し、東海や関東などに大津波が押し寄せ、東京湾にも津波が来る恐れがあるということです。

広島大学の研究グループが海底地形図を分析した結果、伊豆半島の沖合から伊豆諸島北部にあたる海底でも活断層の可能性のある崖のような地形が新たに見つかりました。
既に確認されている活断層を合わせると、長さは270kmを超え、地震で一度にずれ動いた場合、最大でM8.4の巨大地震になるということです。
研究グループは、この巨大地震で発生する津波の高さをシミュレーションしました。
その結果、東海だけでなく、関東の沿岸にも大津波が押し寄せる恐れがあることが分かりました。
東海地方は最大8〜10m、神奈川県や千葉県でも最大5〜6m、東京湾でも数mに達します。
これらの結果は、今からおよそ500年前の明応地震(1498年)の津波の記録とおおむね一致するといいます。
研究グループの中田名誉教授は、東日本大震災も東北沖の巨大活断層が動いた可能性があると指摘しています。
また、今回の活断層のリスクも見過ごしてはならず、今後似たような大地震・大津波が発生する可能性があるので、十分に調べて対応する必要があると指摘しています。

そこで、次に神奈川県の災害対策関連部署に津波対策について問い合わせてみました。
そうしたところ、神奈川県では津波対策は長期と短期に分けて検討しているということでした。
長期とは、1000年に1度くらいの頻度で起きる大津波対策で、現在シミュレーションを進めており、その結果で対応策を検討するということです。
また、短期とは、すぐにでも来る可能性がある津波で、この対応策とは人命最優先で、県民が避難するためのガイド(ハザードマップ)を作ったということでした。

私は、この基本方針はリスク対応策として妥当だと思います。
リスクがあっても、その全てへの対応策を実施するには時間もお金もかかります。
ですから、まず発生頻度の高いものから、あるいは手間のかからないものから対応する、というのが常套手段だからです。
ただし、新たな想定リスクに対応する直近の大津波の発生から既に500年以上経っていることなどから、国や県からの正式なガイドを待たずに、国民や企業は10mくらいの津波が来ても大丈夫なように出来るだけの対応策を検討することが必要なのです。
10mくらいと言った意味は、想定には必ず誤差があるからです。
国や県からのガイドに頼ることなく、最後は自分の身は自分で守るという姿勢が必要なのです。

いずれにしても、もし今M8.4の大地震が起き、数mの津波が東京湾にくれば、この沿岸にある火力発電所はほぼ全滅になる可能性がとても大きいのです。
万一このような事態が実際に起きれば、しばらくの間計画停電の枠を超えてとんでもない電力不足の状態が続くことになります。
このことを国民や企業はしっかりと認識しておくべきなのです。
同時に、多くの国民は”脱原発”を望んでいますが、現在その穴埋めをしている火力発電の抱えるリスクについてももっと関心を寄せるべきなのです。

プロジェクト管理においても同様です。
ある程度の規模の組織であれば、大なり小なり開発標準が規定されており、それに従ってプロジェクト開発が進められます。
でも、今ある開発標準が完璧であるということはまずありません。
ですから、開発を進めている過程で、もし大きな壁にぶち当たり、それを突破する解決案が見つかり、それが開発標準から逸脱してしまう場合には躊躇することなく、例外申請をするべきなのです。
どんな標準にも逸脱規定があるはずですから。
もし、逸脱規定のない開発標準であれば、いざという時の場合の速やかな対応を考慮して逸脱規定を追加しておくべきなのです。

 
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