2012年09月05日
アイデアよもやま話 No.2235 ウナギの価格高騰の理由!
最近、ウナギの価格高騰のためウナギの大好きな私もめったにウナギを食べることが出来ません。
しかも、値段が高くなっているだけでなく、明らかに小ぶりになっているのです。
日本で取れるシラスウナギの量は、50年ほど前に比べてわずか数十分の一にまで減ってしまっているのですから仕方ありません。
そうした中、8月19日(日)放送の「サイエンスZERO」(NHKEテレ東京)でウナギをテーマに取り上げていましたのでご紹介します。 

ウナギの価格高騰の裏には、以下のような背景があります。
ウナギの生まれ故郷は日本からはるか2500km離れたグアム島沖で、生まれた稚魚は海流に乗ってはるばる日本にやってきます。
ところが最近、ウナギの産卵場所がわずかに南にずれていたことが分かってきました。
その理由は雨です。
雨が降ると、海水の塩分濃度が下がり、淵の部分に塩分フロントと呼ばれる塩分濃度の境目ができます。
親ウナギは塩分フロント独特の匂いに引き寄せられて集まり、産卵すると考えられています。
ところが、雨の降る場所は年によって大きく変化することがあるのです。
その理由は、まだはっきりしていませんが、地球温暖化やエルニーニョ現象などの地球規模の環境変化と考えられています。
こうした理由により水温の高い部分が東へ移ること、この時雨の降る場所も一緒に東へとずれます。
すると、塩分フロントまでつられて動き、産卵場所が移動してしまうのです。
このことは、地球環境からみれば非常にわずかなのですが、ウナギの生き残り戦略上重大な影響を及ぼすのです。
こうして、稚魚は日本に向かう黒潮にうまく乗り換えられず、ミンダナオ海流に取り込まれてしまい、「死滅回遊」と呼ばれる流れに乗って多くが死んでしまうのです。
なので、日本にたどり着くのはわずかな数のウナギなのです。
なお、日本で育った親ウナギはまたグアム島沖で産卵するというサイクルです。

こうしたウナギ激減の背景には更にもっと大きな理由があります。
グアム島から長い旅をして日本にやってきたウナギたちを待ち受ける現実はとても厳しいのです。
最初の大きな関門は河口からわずか数百メートルのところに待ち受けています。
現在、どの川にも設置されている堰(せき)が行く手を阻む壁となっているのです。
魚道が設けられていますが、アユなど遊泳力のある魚は段差があっても飛び跳ねることが出来ますが、シラスウナギにとってはかなり厳しいのです。
シラスウナギは這うような動きは出来ても、強い流れに逆らって泳ぐのはとても苦手なのです。

そして、もう一つウナギにとって大問題なのが、住み処となる川の岸辺の環境が悪化していることです。
ウナギの主な餌はエビやカニ、小魚などです。
ところが、この肝心の餌がコンクリートなど人工の護岸では激減することが分かりました。
ウナギにとって住みやすい場所はどんどん減っているのです。 
はるか昔からウナギは命がけで日本の川を目指すように運命付けられています。
ところが、今そこは理想郷にはほど遠い場所になってしまったのです。

こうしてみてくると、ここ数十年間のウナギの激減の原因を作ってきたのは人間の活動によるところがとても大きいのです。
ですから、日本国内だけでみてもの国民自らがウナギの生活圏を奪い、死へと追いやってしまったのです。
その結果、ウナギの数が減り、価格の急騰を招いてしまったのです。

ですから、再度ウナギを増やそうとするならば、魚道をウナギにとっても通りやすくしたり、護岸をウナギや餌になるカニやエビに優しい環境に作り上げることが必要なのです。
ちなみに、フランスでは既に堰にイールダー(ウナギ用魚道)が造られているといいます。
人工芝のようなモノを取り付け、その間をウナギが這って上がることが出来るのです。
なお、イールダーはコストがそれほどかかっていないといいます。

さて、ウナギを全く別な方法で増やす方法が国内で開発されています。
それは、アイデアよもやま話 No.1491 世界初、ウナギの”完全養殖”に成功!でもご紹介したウナギの完全人工養殖です。
現在、完全養殖されたウナギはかば焼きに出来るほどに大きく育っています。
また、大量生産に必要な餌、すなわちク深海に住むオタマボヤというクラゲのような生き物を発見したのです。

オタマボヤは水中のプランクトンを食べたら、その残りカスをハウスという袋に詰めて捨てます。
ハウスはやがて破れ、細かいマリンスノーとなって深海なで降り注ぎます。
ウナギの稚魚はそのマリンスノーを食べていることが分かってきたのです。
これを養殖技術に反映出来れば、人工養殖によって育ったウナギが食卓に上る日も近いかもしれません。
ちなみに、人工養殖のウナギのビジネス化にはまだまだほど遠く、現在はまだ1匹100万円くらいのコストがかかっているといいます。
何とか、早く以前のように安定的に低価格でウナギが食べれるよう成って欲しいと思います。、

ウナギは数千万年前、恐竜がいた頃地球に現れ、ずっと今まで暮らしてきた種といいます。
ですから、人間よりはるかに長い歴史を持っており、このウナギを地球上から絶滅させてしまうことは人類の大きな罪と言えます。
また、ウナギに限らず1日当り100種類もの生き物が絶滅していると言われています。

ウナギの話からどんどん大きな話になってしまいましたが、いつの間にか人間の活動は地球環境に大きな影響を与えるほどになってしまったのです。
ですから、人間は環境に配慮し、持続可能な範囲での活動をする必要性に迫られているのです。
このままの状態の活動を勧めれば、きっと近い将来取り返しの付かないところまでいってしまいます。
人間には、他の生物にはないアイデア力があることが救いです。
アイデア次第できっと持続可能な素晴らしい社会を築くことが出来るはずです。

 
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