2012年05月05日
プロジェクト管理と日常生活 No.226 『悲惨なツアーバス事故発生の背景!』
4月30日(月)に群馬県藤岡市の関越自動車道で7人の死亡事故を起こした「格安」が魅力のツアーバス事故関連については様々な報道がされてきました。

一連の報道によると、以下のことが明らかになりました。
・今回の事故を起こしたバス会社には多数の法令違反があること
  運転手は法律で禁止されている「日雇い」で働いている疑いがある
  国土交通省規則で義務づけられている運行指示書を作成していない
  乗務前に運転手の健康状態を確認する「点呼」も実施していない
  今回の運行前に運転手の健康状態をチェックしていなかった
  運転手への安全教育を怠っていた疑いがある
・運転手1人が1日に運転出来る時間は9時間、距離は670kmであること
  これについては、2010年に総務省が「運転手の健康面などに配慮していない」と指摘し、改定を勧告していた
・他のバスツター会社の運転手の中には、いつこのような事故が起きてもおかしくはない、と危惧していること
・定期便バスに比べて、ツアーバスの運賃が格安(半額近く)であること

国土交通省では、この事故を受けて来週から高速バスツアー運行の貸し切りバス事業者約200社を対象に以下の観点を中心に重点監査を行うことを決めました。
1.運転手の拘束時間
2.連続運転時間
3.休憩の取得状況
4.バスツアー企画の旅行会社と適性運賃で契約を結んでいるか

さて、
プロジェクト管理における標準と最適化の観点からみると、今回のバスツアー事故からいくつか見えてくることがありますので、以下にまとめてみました。
・いくら法令を制定していても、定期的な監査や罰則がなければ、その強制力は弱いこと
・いくら法令があっても、だれのためのものか、という目的に沿ったものでなければ、いずれ問題が起きてしまうこと
  運転手1人が1日に運転出来る時間は9時間、距離は670kmという法令はあくまでもバスツアー会社のためであって、乗客の安全性を考慮したものとは到底思えないこと
・バスツアー会社は法令を逸脱しないまでも法令をギリギリ守る中でバスツアーを運行するので、法令こそ適性である必要があること

法令はプロジェクト管理における標準に相当するものであり、適切な法令の元、その範囲内でバスツアー会社がいろいろとアイデアを駆使して最適な運用をすることが本来の姿なのです。
この枠組みがしっかりしていれば、今回のような事故が起きる可能性はとても低いのです。
ところが、はからずも今回の事件でいかにこの枠組みが適切でないかが表面化してしまいました。
いくら法令順守しても肝心の法令が適切でなければ、あるいはいくら法令が適切なものであってもそれを運用する側が順守しなければ、結果として事故に結びつく可能性は大きいのです。

 
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています