2010年10月26日
アイデアよもやま話 No.1652 プラスチックの秘めるすごい可能性!
 10月6日(水)放送のワールドビジネスサテライト (テレビ東京)で日本のプラスチック技術の最先端について取り上げていましたのでご紹介します。

三菱化学により、現在の技術で外板、ガラスだけでなく車の主構造も可能な限りプラスチック化を進めた自動車があります。
一般の自動車でもバンパーなど重量の1割はプラスチックですが、この自動車は重量の6割がプラスチック製です。
その結果、重量約890kgで同形車より約4割も軽量化されています。
ただし、プラスチックの欠点である軟らかさを補強するため真ん中に炭素繊維の層を入れています。
炭素繊維の価格が割高なため製品化は未定ですが、物理的にはプラスチックカーは既に製造可能なのです。

単純な構造のプラスチックの生産は中国や韓国などアジア諸国に徐々に仕事を奪われています。
でも、その陰で最先端の技術は今も日本が押さえています。

NEC筑波研究所(茨城県つくば市)では将来のバイオプラスチックの原料を研究しています。
主に植物から作られるバイオプラスチックはこれまで穀物などから作られていましたが、大量に捨てられる稲わらなどから安定的に作る技術を世界で初めて開発しました。
従来は、食糧問題とバッティングする恐れがあったので、食べられない植物資源からバイオプラスチックが出来ないかと考えたのです。

世界のプラスチック生産量は約2億4,500トン(2008年)ですが、そのうちバイオプラスチックの生産はわずか数%です。
「燃えやすい」、「壊れやすい」という弱点が普及のネックになっていました。
NECはこの弱点を克服したのです。
また、樹脂成分の75%以上が植物由来なので製造時のCO2発生量は従来の半分になり、世界最高レベルと考えられています。
今後は量産体制を整え、新素材を使ったパソコンなど電子機器の機種を増やしていく方針です。

一方、独立行政法人 科学技術振興機構 JSTイノベーションプラザ広島(広島県東広島市)ではこれまで見たことのないような新しいプラスチックが開発されています。
同じ重さで比べると、鉄の数倍くらい強く、引っ張り強度は従来品の約7倍、同重量の鉄の2〜5倍の強さがあります。

この強さの秘密は独自の製法にあります。
一般のバイオプラスチックは結晶の塊であるツブとツブの間に隙間があるため強さに欠けます。
それに対して、新素材のプラスチックは原料のポリプロピレンを溶けた状態から固まらないように冷やし、一気に押しつぶして作ります。
こうすると、結晶の割合が大幅に増えるうえツブの間に隙間が出来ない強いプラスチックが出来るのです。
結果として、結晶化率が従来の50%以下から約90%へと大幅に増加します。
炭素繊維などを混ぜると、製造コストは1kg数千円になってしまいますが、新素材の原材料は1kg当り百数十円で済んでしまうのです。
原料は一般のプラスチックと同じなのでコストを増やさずに強度を高められます。
この新開発プラスチックは、来年度にまず食品容器で製品化を開始し、将来は自動車などの金属材料やガラスの代替品になると期待されています。

また、慶応大学新川崎タウンキャンパス(神奈川県川崎市)では、従来に比べて動きが非常になめらかなテレビ電話を開発しています。
そこに使われているのが理工学部の小池康博教授の開発したプラスチック製光ファイバーです。

真っすぐにしか進まない光がこのプラスチックを通すと曲がるのです。
光を均一に分散させるといったことも出来ます。
また、結んだり引っ張っても大丈夫です。
素材を工夫することでこうした性質が生まれたのです。
こうした仕組みを応用して出来たのがプラスチック製光ファイバーなのです。
プラスチック製光ファイバーは普通のガラス製の数倍の伝送速度を実現しました。
その通信速度は毎秒40ギガビットで世界記録を持っているそうです。

この他にも、小池教授は高画質で厚さ1〜2ミリの薄さで折り曲げることの出来るプラスチック製の未来型ディスプレイも開発しています。
このディスプレイは高精細でむらがなく、200インチの大画面で投影しても問題ありません。
また、光の分散を抑え、従来よりも3倍明るいテレビ・パソコン用バックライトも開発しています。
次世代通信などの分野で多くの企業が実用化に期待しています。
こうして、既にいくつかの国内の大手企業が製品の開発・事業化に名乗りを上げています。
また、海外の大学・企業も日本発の最先端プラスチックの研究に高い関心を寄せています。

このような未来型ディスプレイが商品化されれば劇的に生産コストが下がるはずです。
また、大きな省エネ効果やそれに伴うCO2排出量削減効果も期待出来ます。
そういう意味で、プラスチックによる素材革命をもたらす可能性を秘めています。

こうして、いろいろなかたちに進化するプラスチックは私たちの日常生活に大きな変化を与えてくれようとしているのです。
まさに、アイデアは無限に存在しているのです。

 
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