2010年06月25日
アイデアよもやま話 No.1547 オランダが進める夢の人工肉作りプロジェクト!
6月4日(金)放送の「ビートたけしと7人の賢者〜未来への選択 人類は滅びるしかないのかSP」(日本テレビ)で人工肉が取り上げられていましたのでご紹介します。

肉の生産に必要なエネルギー量(2007年農林水産省データ)は、
牛肉1kgに対して穀物量11kgで、11kgの穀物栽培に必要な水量は20トンだそうです。
また、日本と中国の一人当りの肉の消費量(年間) (国連食糧農業機関データ)は以下の通りです。
 日本 7.5kg(1961年) 45.4kg(2005年) 約6倍
 中国 3.8kg(1961年) 54.1kg(2005年) 約14倍

このような状況から、
2050年には全世界の肉の生産量を2倍にしなければ、肉にありつけなくなると言われています。
既に、イギリスのチャーチル元首相はこのような状況を先取りしていたのか、1932年に50年後の世界について食物関連で次のように予言していました。
「我々は鶏の胸肉や手羽肉を食べるために1羽の鶏を育てる・・・という馬鹿げたことを止め、食べる部分だけを一定の培養液の中で育てるべきだ。」 

このチャーチル元首相の予言を実現させる計画がオランダで進められています。
オランダの農業自然食糧品質省による、豚1頭から100万頭分の豚肉を人工的に作るという夢のような最先端の研究プロジェクトです。
豚の筋肉から筋幹細胞を取り出し、ブドウ糖、たんぱく質などの栄養を与え培養器の中で37℃(豚の体温)に保つと、筋幹細胞は栄養を吸収しながら増殖していき筋肉組織へと成長していくのです。
そして、3週間後に0.005秒ごとに1回10ボルトの電気を流し、ジムに通うように細胞に運動させて筋肉を強くさせると人工肉が作り出せるのです。
技術的には全ての動物で行うことが可能、と言われています。

この人工肉プロジェクト生みの親で、人工肉製造法の特許を持っているウイレム・ファン・エーレンさんは番組の中で次のようにおっしゃっていました。
「大事なのはお金儲けではなく、人が肉を食べ続けられることです。」
「食べ物がなければ死んでしまう。人工肉が最も効果的な食料安定方法です。」

現在、筋肉組織を造ることに成功していますが、通常の食肉のようなかたちや味、食感を得るためには、血管のようなモノと脂肪を別に造り加える必要があります。
そして、10年後には人工肉のひき肉が完成する予定です。

この記事に接して、人工肉を作る技術は今まで何度かお伝えしてきた再生医療の技術つながるのではないか、と思いました。
例えば、寝たきりの患者さんはほとんど体を動かすことがないのでどんどん筋力が衰えていきます。
でも、手足の筋肉部分に微量の電気を流すことによって筋力の衰えを回復させたり、維持したりすることが出来るはずです。
現在まで人類は自然に対して、絶えずいろいろな技術を発明することにより快適さを追求してきました。
今、あらゆる分野でそのレベルが一段と引き上げられようとしています。
大きな目でみれば、これらは過去の流れの延長線上、と言えます。
でも、明らかに今までと違うのは、神の領域とも言える生物のメカニズムにまで踏み込んだ技術が次々に開発されていることです。
世界的な人口増加、および途上国の経済成長に伴い、食糧危機というリスクを抱える人類は、今後一気にこの流れを加速させていくと思います。
でも、それによる副作用、あるいは悪影響のリスクアセスメントを十分にしておかないと、取り返しのつかないことになってしまう、という危惧をぬぐい去ることが出来ません。

 
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