2010年05月14日
アイデアよもやま話 No.1511 今こそ求められるシステム思考型人材!
5月10日(月)放送のワールドビジネスサテライト (テレビ東京)で「医療分野で遅れる日本」をテーマに取り上げていましたのでご紹介します。

日本は産業用ロボットでは世界シェア約60%と言われています。
ところが、手術用ロボットではアメリカで開発されたダビンチが既に世界で約1400台普及しており事実上の世界標準になっています。
そして、アメリカでは前立腺がんのおよそ80%はダビンチで行われている、と言います。
でも、日本では今年3月に厚生労働省から認可が下りたばかりで6台しか導入されていません。
また、ダビンチによる手術を希望する患者さんは増えているのですが、治療に保険は利かないので1回の手術費は72万円、と高額です。

このような状況について、慶応大学理工学部の谷下一夫教授は番組の中kで次のようにおっしゃっていました。
「日本の技術で十分にダビンチに相当するもの、あるいはそれを上回るものを開発するのは可能ですが、なかなか現状ではそれが出来ていない。」
「優れた技術をまとめ上げるような人材がいない。」
「この分野に日本の優れた技術を活用することを真剣に考えなければいけない状況にあると思います。」

その最大の理由は、医療と工学の連携不足です。
そして、去年ようやく両者の情報をやり取りする組織が出来たばかりです。
また、もう一つの大きな課題は、欧米に比べて審査期間が長い、という日本の医療機器の審査体制です。
そこで、厚生労働省は、審査体制の強化を始めました。
日本の医療機器の審査員は50人ですが、アメリカは1000人です。
2013年度には、審査員を104人に増員して現在の審査期間約2年を欧米並みの14カ月に短縮させようとしています。
ちなみに、ここ数年日本の医療機器の輸出入を金額でみると、毎年輸入が輸出のほぼ2倍で推移しています。

こうした中で、日本発の手術ロボット開発の試みも始まっています。
それは、東京大学大学院工学系研究科の光石衛教授が開発している、脳外科と眼科の手術に使えるロボットです。
仕組みはダビンチとほぼ同じですが、操縦席に医師が座り、3Dの映像を見ながらロボットの腕を操作出来ます。
ダビンチでは2ミリ程度の血管の縫合が限界で、主に内蔵の手術に使われるのに対して、新型ロボットでは1ミリ以下の血管の縫合が可能なのです。
また、10マイクロメートルの動きを制御出来て、ダビンチの10分の1以下です。

番組のコメンテーター、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの五十嵐敬喜 調査部長の次の言葉がとても印象的でした。
「いいものを作る、というのと同じぐらい大事なことがいいものを売る、あるいは使ってもらう、ということなのです。」
「つまり、いいものかも知れないけれども使い勝手が悪い、とかニーズに合わないものだったら使ってもらえないわけです。」
「どういうニーズがあり、どうやって売るんだ、ということをちゃんと知った人が作る人とは別にいないといけない。」
「両方をちゃんと知った人がプロとしてそれをやる、というようなことが必要です。」
「審査期間を短くするのであれば、ロビー活動をして政治家や役所を動かす人材がもっといないと駄目です。」

こうしてみると、物事を部分的にではなく全体的に捉えて最適解を求めるシステム思考型人材が政界、財界などあらゆる分野で今こそ求められている、と思います。
部分的な最適解においては、日本が先進的であることは自他共に認めるところです。
でも、それだけでは日本がいずれ立ち行かなくなることになるだけでなく、世界的にみても日本の貢献出来るチャンスを逃すことになるのですから世界的な損失をもたらす、ということにもなるのです。

 
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