2010年03月17日
アイデアよもやま話 No.1461 なぜ1年は365日なのか − 暦の不思議!
2月28日(日)に放送された奇跡の地球物語〜近未来創造サイエンス〜(テレビ朝日)のテーマは「暦」でした。
今まで何度か、この番組の内容についてお伝えしてきましたが、本当にこの番組は日常生活の中にあるさまざまな不思議について私たちに分かりやすく伝えてくれます。

なぜ、1年は365日で12カ月に分かれているのか、なぜ4年に1度の「閏年」には年が1日増えるのか、そこには地球に大きな影響を与える2つの天体と昔の権力者たちの思惑が隠されていた、なんでご存知でしょうか。
今回は少し長文になりますが、この一見当然と思っている現在の暦の成り立ちについてご紹介します。

なぜ2月は28日しかないのか、それを解き明かすには暦誕生の歴史を遡らなければなりません。
暦の誕生には太陽と月が大きな役割を果たしています。
私たちの祖先は、太陽が東から昇って西に沈む、という繰り返しの規則性から1日という単位を生み出し、夜空に浮かぶ月の満ち欠けの周期から1ヶ月を作りました。
そして、自然界の営みから季節の移り変わり、1年という時間の流れを認識するようになったと考えられています。

そして、今更ながらですが、始めに暦ありき、ではないのです。
日々の生活に欠かせないものとして暦は誕生したと思われます。
先人たちによる、その試みの跡は世界各地に残っています。
エジプトの大地に立つオベリスクは世界最古の日時計と言われています。
マヤ文明の遺跡、チチェン・イッツァのピラミッドに刻まれたククルカンには春分と秋分の日にだけ太陽が作り出す影によって胴体が現れます。
人々はこのククルカンの光陰によって種まきと収穫の時期を知ったのです。
私達が今使っている暦の原型は農業でより多くの実りを得るための手段として誕生したのです。

人類最古の暦と言われる太陰暦、その基準となっているのが月の満ち欠けの周期、月が地球を1周する新月から次の新月までを一つの単位としており、ここから一月という言葉が生まれたのです。
一月を表す英語のmonthはmoonが語源と言われています。
月の満ち欠けの周期は29.5日、そこから29日の月と30日の月を交互に12回繰り返し、季節が一周する暦が作られました。
ところが、この暦では1年は354日、1年経つだびに季節が縮んでしまいます。
そのため、季節の把握が重要な農業には不向きな暦だったのです。

太陽暦は太陰暦に比べてより農業に適した暦でした。
ナイル川周辺で麦などを栽培して暮らしていた古代エジプト人は毎年定期的に起こるナイル川の氾濫を事前に予測し、農業に利用することは出来ないかと考えていました。
彼らは天上で最も明るいと言われるおおいぬ座のシリウスの位置で毎年起こる洪水の時期を予測出来ることを突き止めました。
そして、シリウスの運行をを観察することにより季節のサイクルが365日であることを割り出した、と言われています。

太陰太陽暦は太陰暦をベースに閏月を入れることで季節のズレを修正する暦で、文明が発達していた中国で生まれました。
この暦は、太陰暦で生じる季節のズレ、11日を修正するため2年9ヶ月ごとにおよそ30日分まとめて加え、1年を13ヶ月にする、と言うものでした。
この加えられる月を閏月と呼んでいます。
明治の初めまで日本で使われていたのもこの暦です。

ペリー来航の1853年頃より、日本は急速な近代化を進め近代社会の仲間入りをするためには暦も諸外国に合わせる必要があると考えました。
そこで、明治政府は従来の太陰太陽暦から現在私たちが使っている新たな暦の導入に踏み切った、とされています。
ということで、暦は文明の発達とともに発達し、それを使う人たちの文化、気候や風土などさまざまな環境の中で独自の発達を遂げてきたのです。

1年365日を12カ月に振り分けた現在の暦、その暦の中でなぜ2月だけが28日しかないのか、その起源はローマにありました。
起源前、古代ローマの暦は農業を中心に考えられていました。
そのため人々が農作業を開始する春を1年の始まりとしていました。
そして、秋の収穫を終えてから翌年の春までのおよそ60日間は暦に載っていませんでした。
農作業が出来ない冬は特別日付を数える必要がないと判断されていたのです。
つまり、当時の暦は3月から始まり12月で終了、1月、2月に当たるおよそ60日間は暦上では空白期間だったのです。
しかし、その後、冬も日付を数えるようになり、暦も新たに2ヶ月が付け加えられました。
これで、1年が12カ月、3月が年始で2月が年末の暦が出来上がりました。
そして、それぞれの月は31日ある大の月と30日しかない小の月に交互に振り分けられました。
この時点では、まだ2月は30日、この暦では全部の月を合計すると366日になってしまいます。
そこで、誤差の1日を年末の2月で調整することになり、30日から1日引いて2月は29日とされました。

紀元前46年、ジュリアス・シ−ザーの次の一言でこの暦に大きな変化がもたらされました。
「1年の始まりを3月ではなく1月とせよ。」
彼は政治的な理由により、年始を今までの3月から1月に変更したのです。
ここに、1月から始まり12月で終わる現在の暦が原型が完成しました。
更に、彼は自分の誕生月である7月に自分の名前を付けるように命じました。
当時の暦の月の名前はローマの神々の名前が付けられていました。
月に自分の名を付けるのは、自らの名前を神々の名前に連ねる権力の誇示であったと言われています。
こうして、7月にはユリウスの名が付けられました。
英語読みでは、ジュリアス、これが現在のJulyの由来です。

その後、2月を29日から28日へと変更するよう命令を下したのは、シーザーの義理の息子で初代ローマ皇帝のアウグストゥスでした。
また、彼は義父に習い、自分が3度戦いに勝利を収めた8月に自分の名を付けるように命じました。
これにより、8月はアウグストゥス、つまり現在のAugustへと変更されたのです。
そして、更に自分の名の付いた8月が小の月である30日とはけしからん、ということで8月を大の月である31日へと変更を命じました。
ところが、このように変更すると大の月が3ヶ月連続してしまい、1年は366日になり1日増えてしまいます。
そこで、本来大の月であった9月を小の月へと変更、10月から12月も大の月と小の月の順番を入れ替えることにしました。
それでもまだ1日多く、そこで目を付けたのがかつての年末であり既に29日になっていた2月です。
こうして、2月から更にもう1日引いて2月は28日となりました。
このように、私たちが日々使う暦には古代の権力者たちの思惑やプライドが刻印されているのです。

次に1日はなぜ24時間なのか、その由来は諸説あります。
一説によれば、月の満ち欠けを基準とする太陰暦では、1年は12カ月、この考え方に基づいて1年を12等分するように昼と夜をそれぞれ12等分し、1日は24時間になった、と言われています。
本当の1年というのは、地球が太陽のまわりを1周する時間である365日と5時間49分です。
なので、4年経つとほぼ1日になるのでそのズレを1回直す必要があり、それが閏年でその年だけ2月は29日になるのです。
ところが、厳密には5時間49分を4倍すると、23時間16分で4年に1回24時間を加えると44分多くなってしまうのです。
そこで、閏年は400年に100回ではなく97回にしてこの誤差を調整する必要があるのです。
ということで、閏年は必ず4年に1回ではないのです。
ちなみに、400年に3回閏年ではない年は前回1900年でした。
次回訪れるのは、90年後の2100年です。

ここで、更に驚くのは地球の自転はわずかながら遅くなりつつある、というのです。
これが積み重なると、1日と1年の関係がずれてくるので更に現在の暦を変更する必要がある、と考えられています。

今回の番組で、なぜ大の月、小の月の並びが不規則なのかがよく分かりました。
考えてみれば、このような古代権力者のせいで、暦に関して悩まなくてもいいところで小学生は暦の理解に悩まされているのです。
また、農業など生活の必要に迫られて、とは言え古代人による暦の発明は大変素晴らしいアイデアと言えます。
暦に限らず、今までの何世代にも渡る人類のアイデアの積み重ねのうえに今生きている人たちはそれなりに便利な生活が出来ているわけです。
そういう意味で、わずかここ100年ばかりの間に大きな問題になってきた地球環境問題に対して解決の道筋を付けるのが今を生きる人たちの大きな義務であり、責任であると思うのです。

 
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