2009年12月16日
アイデアよもやま話 No.1383 賃金は人にではなく仕事につけるべき!
11月26日(月)放送のワールドビジネスサテライト (テレビ東京)で「同一労働同一賃金は可能か」をテーマに取り上げていましたのでご紹介します。

おそらく、一般論としては私も含めて多くの人たちが同一労働同一賃金に賛成だと思います。
ところが、ヨーロッパでは仕事に賃金をつけているのに日本では人に賃金をつけています。
ですから、ヨーロッパでは正規社員、非正規社員に係わらず、同一賃金なのです。
ちなみに、以下は政策が成功しているオランダの場合です。
・1982年 ワッセナー同意
 失業率約12%打開のため、3つの合意をした。
 1.労働者:賃金抑制を受け入れる
 2.企業  :雇用を維持する 
 3.政府  :減税、企業助成
・1996年 同一労働同一賃金を法制化
その結果、失業率約12%が2000年には3%前後まで下がり、その後安定しているのです。

でも、日本は残念ながら非正規社員は正規社員の賃金の半分以下になっています。
これがすなわち日本が格差社会になってしまった大きな要因なのです。
そして、この状況が国全体の活力を奪っている、という大きな問題をもたらしています。

番組の中で、人事コンサルタントの城繁幸さんは以下のようにおっしゃっていました。
「賃金の格差は世界のどこに行ってもあります。」
「日本の場合の問題はそれらの国と決定的な違いが一つあって、リスクの少ないローリスクの正社員がハイリータンなんです。」
「大手の正社員、中小の正社員、下請けの正社員、非正規雇用、それぞれの中でみんなあきらめてしまっている。」
「大手の正社員はある程度年がいくと基本給が上がるから努力しないでしがみつく。」
「下請けや非正規の人は努力しても報われないからあきらめる。」
「だれも努力しないから、こういうところから新しい価値観は絶対生まれない。」
「非正規社員の賃金を上げるために、正社員の方にはある程度譲るべき部分があるはず。」

また、番組の中で、派遣切りにあった元派遣社員の女性の次の言葉がとても印象的でした。
「今まで企業が成り立ってきたのは、非正規で安い人件費があったからこそ正社員の給料が出たと思います。」
「そういうことを分かっている正社員の方がどれくらいいるんだろうな・・・」
ちなみに、仕事を引き継いだのは正社員でしたので、派遣という存在に疑問が涌いてきた、とのことです。
あらためて、このような社会は健全な社会とは言えない、と思いました。

このような状況の中で、広島電鉄は今年3月に契約社員の賃上げのために正社員の賃下げを労使で合意しました。
このような合意は今の日本企業の中にあって画期的であり、賞賛すべきであると思います。
広島電鉄は2001年から正社員の代わりに契約社員の運転士や車掌を採用してきました。
ところが、契約社員の賃金は正社員の平均月収よりも約5万円低かったのです。
そして、今年10月に契約社員160人を正社員化しましたが、一方ではベテランを中心に正社員の3割が賃下げになりました。

オランダの例からも、広島電鉄の例からも、政府、あるいは経営者の決断次第で世の中のあり方、制度、仕組みは変革出来るのです。
ですから、しかるべき立場の人たちにはそれなりの見識を持って、世の中をいい方向に持っていくように決断していただきたいと思うのです。
そして、そのためのアイデアは無限に存在しているのです。

 
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