2009年06月18日
アイデアよもやま話 No.1228 今の日本企業は非正規社員の犠牲の上に成り立っている!
6月2日付け読売新聞の朝刊で「派遣の労災 隠ぺい横行」というテーマの記事を目にしました。
この記事で、厚生労働省の調査結果が記されていました。
昨年、1年間に死傷した派遣労働者の数は5,631人で2年連続で5000人を超えているのです。
製造業の派遣が解禁された2004年に比べて8倍以上に増えているのです。
恐らく実態はもっと多いのではないでしょうか。
これに対して、派遣労働者数は最新の2007年度調査で約381万人で、この数字は2004年度は約227万人の1.7倍です。
これから明らかなように、派遣労働者数の伸びに比べ、労災による死傷者数が急増しています。
これは何を意味しているのでしょうか。
今の日本経済は、大不況と言われていますが、この程度で収まっている裏には、派遣労働者を含めた非正規社員の犠牲があるのです。
理不尽と言われる、何年働いても収入の上がらない、あるいは福利厚生上の待遇の差別です。

ちょっと視点を変えてみると、世の中は弱者の立場が行動を起こすことによって、改善されていくのが常なのです。
企業間の競争もそうです。
例えば、メーカー vs 小売業間も何十年か前までは、圧倒的にメーカーの立場が強かったのです。
でも、小売業がスーパーマーケットという形態で大量販売を可能にしてから、その販売力を武器に徐々にメーカーを凌駕して今日に至っています。

では、
派遣先 vs 派遣元の関係においてはどうでしょう。
今は、大不況のせいもあり、圧倒的に派遣先の力が強く、ほとんど言い値で派遣元は仕事を請け負っていると思われます。
また、派遣元による仲介手数料も取られるので、派遣労働者の手元には正規社員に比べて何分の1かの収入になっています。
しかも福利・厚生関連の待遇を比べれば、まさに格差社会と言わざるをえません。

このような状態は、明らかに望ましい社会とは言えません。
では、どうしたらいいのでしょうか。
一言で言えば、アメリカ型の市場経済至上主義よりもヨーロッパ型の高福祉高負担を目指すべきだと思います。
具体的なイメージについては、以下のとおり以前お伝えしました。
ここで、明らかなことは、その国の政策次第でどのような社会になるか、という方向付けやインフラが確立してしまうことです。
現在の非正規社員問題を抱える日本、アメリカ、そしてヨーロッパの状況がそれを物語っているのです。
ですから、この国をどのような社会にするのか、というビジョン、そして具体的な政策がとても重要になってきます。
長い目でみれば、国の政策と国民の生活は当然のことながらリンクしてくるのです。
そして、国民の民意が大なり小なりその国の政策に反映されるのです。
ですから、国民のレベルがその国の政策のレベルを決定する、と言えるのです。

繰り返しになりますが、働きたくても働くことの出来ない人たちの大勢いる社会、そして、同じ仕事をしている人の間で収入に差があるような社会は健全な社会とは言えません。

 
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