2021年09月22日
アイデアよもやま話 No.5067 中国がCO2排出量ワーストから脱却へ!?
5月24日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でCO2排出量ワーストから脱却する中国について取り上げていたのでその一部をご紹介します。

発電の約60%を石炭火力で賄う世界第2位の経済大国、中国ですが、国内外から大気汚染の原因と問題視されてきました。
そこで中国政府は“脱炭素”の達成に向け再生可能エネルギーなどの比率を上げようと国を挙げて乗り出しています。

眩しいほどの陽光が降り注ぐ中国内陸の地、青海省では日照時間の長さを活かし、大規模な電源開発が行われています。
砂漠を走ると見えてきたのは無数の太陽光発電パネル、中国が威信を賭け、2012年に建設が始まった巨大メガソーラー、海南州太陽光発電所、その広さは東京23区とほぼ同じ広さ、現在3分の1程度が完成、既に一般の原子力発電所の9基分に匹敵する出力があります。
地元政府の幹部は次のようにおっしゃっています。
「青海省と地元政府は国のCO2排出量ゼロに貢献したい。」
「2025年までの14次5ヵ年計画で1000万kwの発電所を3つ作る。」

CO2排出量世界一の中国が掲げる野望ですが、2020年9月に開催された国連総会の場で、習近平国家主席は次のようにおっしゃっています。
「2030年までにCO2排出量のピークに到達するよう努め、2060年までにCO2の排出量実質ゼロを達成するよう努める。」

その達成にもう一つ欠かせないのが原子力発電です。
現在49基が運転している中国はアメリカ、フランスに次ぐ3位、福島第一原発事故以降の日本とは対照的に中国では今、世界で最も多い17基が建設中です。
発電量に占める原発の割合を現在の約5%から2035年までに約10%に引き上げる計画です。

コロナ禍の4月、北京では国営企業の“ゆるキャラ”も登場した原発推進を掲げる大規模展示会、その目玉が中国が独自に開発したとする最新型(第3世代)の原発、華竜1号です。
今年1月に初めて営業運転を開始しました。
福島第一原発事故の対応策もあるといいます。
中国核工業集団の関係者は次のようにおっしゃっています。
「華竜1号は電気無しでも自然に作動する受動的な安全システムを3系統持っています。」

緊急時に外部電源を失ったとしても、水を自然に循環させて原子炉を冷却する仕組みになっていて、メルトダウンを防げるとしています。
その会場にはフランスの原子力代替エネルギー庁やロシアの原子力の国営企業など海外勢も多数参加しています。
世界の原子力のけん引役を目指す中国、協力関係を結ぼうと各国の機関や企業が集まりました。
イギリス大使館の担当者は次のようにおっしゃっています。
「イギリスの商品やサービスを中国の原子力産業に輸出することやイギリスの原子力産業へ中国の投資を促進することに関心がある。」

またロシアからの参加者は次のようにおっしゃっています。
「この展示会は有意義だと思う。」
「国際市場での(原子力の)可能性を示せる。」

中国は既に原発を輸出、巨大経済圏構想“一帯一路”と連携し、最初の輸出先となったパキスタンでも華竜1号が建設され、営業運転を開始したばかりです。
積極的な輸出政策でイギリスやアルゼンチンでも華竜1号の導入が決定、業界団体の幹部は資源確保の観点からも原子力が重要だと訴えます。
中国核能行業協会の張延克理事長は次のようにおっしゃっています。
「原子力開発は国のエネルギー安全保障の能力を強化する。」
「石油や天然ガスは外国への依存度が高く、エネルギー安全保障は大きな圧力に直面している。」
「エネルギー構造の変革は急務だ。」

世界の原発の状況(添付参照)は、運転中の原発では日本は9基、世界ではアメリカ、フランス、中国の順になっています。
そして、建設中、計画中を含めると、今後、中国が圧倒的な伸びを見せています。
こうした状況について、解説キャスターで日本経済新聞論説主幹の原田亮介さんは次のようにおっしゃっています。
「2011年の東日本大震災で原発事故があって、日本の原子力政策がストップしたわけですけど、それだけじゃなくて欧米の原子力を推進するエネルギー、力がだいぶ弱くなった。」
「その影響が出ているんだろうと思います。」
「(そうした中でも中国だけは原発を推進しているということだが、意外なのは原発発電量のシェアが4.9%と低いという指摘に対して、)原発を沢山つくってもエネルギーの需要がどんどん増えているので、例えば中国は昨年だけで原子力発電所30基分の石炭火力をつくっているんです。」
「先ほども出ましたが、習近平さんが2030年にCO2排出量のピークを付けると言っていたのが、その時点でも原発の発電量のシェアは10%いかないんですね。」

「(日本はどうかと考えた時に、2030年にCO2排出量の46%削減という目標を掲げているわけですが、それを達成するためにも原発をどう考えていくべきかという問いに対して、)再生可能エネルギーを強化して活用していくのは第一前提なんですけど、しかしながら原発もある程度のシェアが必要なると。」
「で、過去20年近く、日本は原発を新しく作ってないんですよね。」
「なので、そのための人材を確保して育てることなどが絶対必要なんだろうと思います。」

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

番組を通して分かるのは、中国は“脱化石燃料”に向けて太陽光を中心とした再生可能エネルギー、および原発の積極的な導入に取り組んでいるということです。
しかし、これらの取り組みでも国内の経済成長に伴う電力需要に追い付かず、石炭火力で何とか電力の不足分を補おうとしているというのが現状なのです。
しかも、2030年にCO2排出量のピークを付けるという目標を掲げていますから、少なくとも2030年まではCO2排出量は増え続けると見込まれます。
しかも、2060年までにCO2の排出量実質ゼロを達成するよう努めるという方針です。
また今後の経済成長が見込まれるインドなどの途上国は2030年以降もCO2排出量は増え続けると見込まれます。

一方、プロジェクト管理と日常生活 No.708 『基準年が異なる各国の温暖化ガス排出量の削減目標』でもお伝えしたように欧米や日本は今後毎年CO2排出量の削減に向けて取り組んでおります。
そして、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)による「1.5℃特別報告書」(2018年)では「2050年までにCO2排出量を実質ゼロ」の実現が必要であるとしています。
問題は、先進国と途上国を合わせた世界全体でのCO2排出量の削減をいかに進めるかですが、これについては「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)」の場で締結国が議論を進めています。
ちなみに、次回の第26回、COP26はイギリスのグラスゴーで今年10月31日〜11月12日に開催される予定です。(こちらを参照)

なお、国別CO2排出量の割合(2018年)、および国別一人当たりCO2排出量(2018年)についてはこちらを参照下さい。
このグラフを見ると、やはり中国のCO2排出量の割合が28.4%、そして一人当たりCO2排出量が6.8トン/人という数字は無視出来ません。
中国の経済成長率は先進国に比べて今後ともしばらくは高いですから、CO2排出量の割合は当面増え続けると見込まれます。

こうした中国におけるCO2排出量の削減よりも経済成長を優先させる方針を阻止する方策の一つがEUで2026年から全面実施される予定の国境炭素税です。(参照:アイデアよもやま話 No.5049 EVを巡る世界的潮流!
日本製のEVのEUへの輸出に際し、この国境炭素税は無視出来ません。
今回の自民党総裁選でも“脱原発”が一つの争点になっていますが、CO2排出量の削減に向けては、CO2排出量ゼロの原発は魅力的に感じますが、EUの一部の国は福島第一原発事故を契機に一気に“脱原発”への流れが起きています。
原発にはいったん事故が起きた時のリスクがとても大きいのです。
ですから、国境炭素税への対応を考えると、“脱原発”については“言うは易し行うは難し”なのです。

ということで、中国は再生可能エネルギーによる発電や新規原発の急速な展開に取り組んでいますが、まだまだ膨大な需要に応えられず、石炭火力に依存していますが、世界的な国境炭素税の導入により、石炭火力の新設にブレーキがかかると見込まれます。
このブレーキをきっかけに中国が更に再生可能エネルギーによる発電や新規原発の展開を加速させれば、ひょっとしたら中国はCO2排出量ワーストから脱却し、世界で1位、2位を争うようにCO2排出量ゼロを実現してしまうかもしれません。
習近平国家主席率いる今の中国にはこうしたすさまじいパワーを感じます。
更に中国はこうした国内での成果をもとに途上国を中心にCO2排出量ゼロに向けての取り組みを展開していき、途上国への支配力を強めていくことは目に見えています。

こうした中国の素早い取り組みの波に日本が飲み込まれることのないように、そして日本が再生可能エネルギーで世界的な主導権を握るためには早急に再生可能エネルギーへのシフト、および“脱原発”を実現すべく、プロジェクト管理と日常生活 No.708 『基準年が異なる各国の温暖化ガス排出量の削減目標』の最後にお伝えしたいくつかのアイデアの候補の実用化を目指すべきだと思うのです。


添付:


 
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2021年09月21日
アイデアよもやま話 No.5066 炎に反応して”消化するシート”!
5月24日(月)放送の「あさチャン!」(TBSテレビ)で炎に反応して”消化するシート”について取り上げていたのでご紹介します。 

ヤマトプロテック株式会社の中央研究所(茨城県河内町)である実験が行われていました。
鉄製の小屋の中には無数の白いシートが貼られており、ここに1リットルのガソリンをまいてガソリンに着火、激しく噴き出す炎、小屋から白い煙が立ち上ったかと思うと、炎はひとりでに消えました。
着火してから火が消えるまでたった約20秒、いったいこのシートはどういうものなのか、研究所の富山昇吾所長は次のようにおっしゃっています。
「世界初の技術でして、自ら消化するシートですね。」

このシートを使った実験映像では、火の着いたローソクに近づけると一瞬で火が消えました。
秘密は“温度”と“白い煙”にあるといいます。
富山所長は次のようにおっしゃっています。
「消化シートが炎を受けることによって300℃の段階で煙を発生して、その煙の中に消火剤が含まれておりまして、その炎を消してやるというメカニズムになっております。」

つまり、勢いよく噴き出す煙が消化剤なのです。
壁などに貼られたシートが温度の上昇を感知して、自動的に消火剤の煙を噴出してくれるため、人がいなくても初期消火が出来るのです。
実はこの壁や天井に貼る消化シートが開発されるきっかけになった火災がありまして。
それは2019年に起きた首里城(沖縄県)の火災、正殿を含め7棟が全焼しました。
富山所長は次のようにおっしゃっています。
「首里城で大規模な火災があって、これを用いていたら絶対に消せていたという自信がありましたので。」

もともとはスマートフォンなどリチウムイオン電池の火災に対応するために主にタブレット型として開発したこの消火剤ですが、文化財などの貴重な建造物を火災から守れるよう、壁や天井、柱などの建材にも貼れるシートにかたちを変えました。
現在、文化財を鑑賞する邪魔にならないよう、シートを透明にする研究も進んでいます。
更に煙を吸い込んでも害がないのです。
煙の近くで呼吸しても全く苦しくならないし、煙は無臭で目も沁みないといいます。
富山所長は次のようにおっしゃっています。
「煙そのものが安全性も非常に高いので、他のガス消火設備に比べて人がいるところでも作動しても全然問題がないというところが一つのメリットです。」

この大きなメリットを生かして病院や駅、学校、そして駐車場やエレベーターといった人が集まる様々な場所での活用が期待されています。
現在も研究が続けられていて、早ければ来年にも実用化されるということです。
富山所長は次のようにおっしゃっています
「街づくりのうえでも火災の拡大を抑制出来るところが一つの強みになるのではないかなと思います。」
「どこでもこのシートを使っていただけるようにして、火事を完全になくしていきたいと思います。」

このシートは薄くて紙のようだといいます。
火事が全くない世の中を目指すということですが、今後住宅火災から守るために壁紙として利用する研究も進んでいるということです。

以上、番組の内容をご紹介してきました。

今回ご紹介した“消化するシート”について、以下にまとめてみました。
(開発のきっかけ)
・2019年に起きた首里城(沖縄県)の大火災
(機能)
・壁などに貼られたシートが温度の上昇を感知して、自動的に消火剤の煙を噴出すること
(メリット)
・人がいなくても初期消火が出来ること
・文化財などの貴重な建造物を火災から守れること
・人が集まる様々な場所での活用が期待されること
・煙を吸い込んでも害がないこと
(今後の予定)
・文化財を鑑賞する邪魔にならないような透明なシートの研究開発
・住宅火災から守るために壁紙として利用する研究開発

この“消化するシート”は早ければ来年にも実用化される見込みといいますから、特に文化財などの貴重な建造物の関係者からの引き合いが大いに期待出来ます。
更に、ヤマトプロテックでは火事が全くない世の中を目指すといいますから、将来的には進化版の“消化するシート”を世界中に普及させることにより火災とはほとんど無縁の社会を実現してくれる可能性を秘めているのです。

ということで、火災予防の観点から見て“消化するシート”はとても画期的な発明と言えます。

 
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2021年09月20日
アイデアよもやま話 No.5065 全固体電池の実力を上回る「硫化物電池」!
5月18日(火)付けネット記事(こちらを参照)で全固体電池の実力を上回る「硫化物電池」について取り上げていたのでその一部をご紹介します。 

・脱炭素社会の実現に向け、政府は2030年代半ばまでに国内新車販売全てを電動車にする目標を打ち出した。そのけん引役は電気自動車(EV)であり、中でも性能を左右する電池技術の行方が注目される。次世代の全固体電池だけでなく、主流のリチウムイオン電池をしのぐ「革新型蓄電池」の開発も進む。
・産総研関西センターではEV用次世代電池で複数の開発プロジェクトが進む。中でも注目は、16―20年度に実施された新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の産学連携プロジェクト「革新型蓄電池実用化促進基盤技術開発(RISING2)」だ。「亜鉛空気電池」「コンバージョン電池」など4つの革新型蓄電池をターゲットに、京都大学と同センターが中核開発拠点となった。
・ RISING2で掲げたEV用電池の開発目標は、エネルギー密度が1キログラム当たり500ワット時以上、1充電走行距離では500キロメートル以上だ。
・同センターで取り組んだ電池の一つが、正極に硫黄とバナジウムなどの金属を、負極にはリチウムを使う「硫化物電池」だ。硫黄は資源が豊富で安価、軽くて容量も大きいと電池材料で注目される。
・硫化物電池は理論エネルギー密度で現行のリチウムイオン電池の4倍程度とされる。「試作セルでは1キログラム当たり、500ワット時にめどをつけた」(栄部氏)。今後はメーカーへ橋渡ししつつ、改良を進めていく。
・電池の開発は、計算技術の発達で構造解析や材料開発の効率化が進む。ただ「最後は人海戦術で課題を一つずつつぶす作業が必要。それが面白くもあり、しんどさでもある」と倉谷氏(蓄電デバイス研究グループ長の倉谷健太郎氏)は語る。栄部氏(次世代蓄電池研究グループ上級主任研究員の栄部比夏里氏)は「(同センターは)電池の電気化学反応を分かっている人が多いのが強み。日本企業の競争力が高まる技術を提案したい」と強調する。

以上、ネット記事の内容の一部をご紹介してきました。

要するに、産総研関西センターではEV用次世代電池で複数の開発プロジェクトが進んでいますが、同センターで取り組んだ電池の一つが「硫化物電池」であり、その理論エネルギー密度で現行のリチウムイオン電池の4倍程度とされているのです。
そして、「試作セルでは1kg当たり、500ワット時にめどをつけた」といい、今後はメーカーへ橋渡ししつつ、改良を進めていくというのです。
ここで注目すべきは「硫化物電池」が全個体電池の実力を上回るということです。
また、もし「硫化物電池」が実用化されれば、この電池を200kg搭載すると容量は100kwhですから実際の航続距離はざっと600km〜650kmということになります。
フル充電での航続距離がこの程度であれば、業務用としても十分に利用可能です。

ということで、まだまだ多くの課題があると思いますが、今後はこの研究開発をメーカーが引き継ぎ、少しでも早く市販化につなげていただきたいと思います。
国としてもこうした製品開発には資金面などで積極的な支援をすべきだと思います。

 
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2021年09月19日
No.5064 ちょっと一休み その792 『ある医師が訴える”自宅療養という名の放置”』
変異ウイルスの感染拡大で自宅療養者数が増え続け、中には急に症状が重症化し、一方で医療崩壊が進み、病院での受診が間に合わず、亡くなる感染者も出てきています、
そうした中、8月23日(月)放送の「あさチャン」(TBSテレビ)である医師が訴える”自宅療養という名の放置”について取り上げていたので番組の一部をご紹介します。
なお、日付は全て番組放送時のものです。

全国の自宅療養者数は10万人に迫る勢いで過去最多を更新しており、深刻度を増す訪問診療の現場からは自宅療養の名のもとに放置されてしまっているという声も聞かれました。
涙ながらに訴えるのは、自宅療養を余儀なくされた30代の男性の母親です。
基礎疾患のないこの男性、8月8日に感染が確認され、10日の夜に救急車を呼びましたが、搬送先が見つからず、自宅待機させられていました。
酸素飽和度は90前半、中等症で入院が必要なレベルですが、自宅で看るしかありません。
その後、男性は自宅療養を続けましたが、5日後に容態が急変、ひなた在宅クリニック山王の田代和馬院長(32歳)が駆け付けると点滴をして抗生物資を投与します。
そして男性の母親に次のように病状を説明します。
「お母さん、今の状態ね、結構厳しい状況で、本来だったら人工呼吸を考えるような状況。」
「で、限られた医療しか出来ないけど、受けてくれる病院に行くのが一つ、もう一つがどうせ入院するなら人工呼吸が出来るところに入院させたいし、明日絶対空くとは言えないけど、明日に賭けてみる。」
「ある意味、覚悟です。」
「お母さんにこんなこと言うなんて、僕も医者人生で初めてぐらいです。」
「本当に辛い、コロナが憎い。」

結局、母親は高度な医療が受けられる病院が空くのを待つという、苦渋の決断を下し、次のようにおっしゃっています。
「こんなに本当に東京がひどい状況って、本当に分からなかったです。」
「自分の息子の身になって初めて。」

しかし、翌日も入院先は見つかりませんでした。
そして、翌朝、救急車を呼んでから8日後となる8月18日に保健所から田代院長に電話があり、男性はようやく入院することが出来ました。
院長の田代医師は急増するコロナ患者の診療に追われ、現在、中等症患者20人ほどを診ています。

在宅ではどうしても治療の選択肢が限られてしまい、田代医師は強い危機感を持っていました。
こうした状況について、田代医師は次のようにおっしゃっています。
「尊厳が失われた状態で、お家で「療養」という名の「放置」ですね、もうね。」
「されてしまっている状況というのが次から次に出てきている。」

この日、ようやく男性の入院が決まりました。
こうした自宅療養者は全国で9万6709人と過去最多です。(8月18日 厚労省より)

以上、自宅療養を中心に番組の内容の一部をご紹介してきました。

また、8月29日(日)放送の「ニュース」(NHK総合テレビ)では限界に近い医療現場について取り上げていたのでその一部をご紹介します。

新型コロナウイルスによる重症者数の拡大傾向が続く中、重症者の治療にあたる国立国際医療研究センターの森岡慎一郎医師は次のようにおっしゃっています。
「医療現場はもう限界に近いと思います。」
「仮に病床が準備出来たとしても、そこで働く医療者が中々いなかったり、医療機器の面でも不足気味になっておりますから、人工呼吸器に関しては日々ギリギリでして、メンタルは勿論ないし、院内からかき集めているという状況です。」
「救急者が来たとしても、入院出来る病院が見つからない。」
「入院出来たとしても適切な治療が受けられる保証がない。」
「一人ひとりの方が自分ごとに捉えていただいて、行動につなげていただきたい。」

医師によりますと、入院の依頼を連日数十件断らざるを得なくなっているということです。

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

なお、8月30日(月)付けネット記事(こちらを参照)によると、千葉県柏市は8月30日、新型コロナウイルスに感染して自宅で待機していた市内の60代女性が死後3日程度経過してから発見されたと発表したといいます。
この他にもこうした事例に関する報道は後を絶ちません。

こうした事例からも、田代院長のおっしゃる「自宅療養という名の放置」という言葉はとても重い言葉だと思います。
この言葉はまさに“医療崩壊”そのものを表現しています。
こうした現実は、単にコロナ患者の方々のみならず、コロナ以外の患者の方々の受診機会も奪うということを忘れてはなりません。
こうした状況を受けて、緊急事態宣言が19都道府県で9月12日から9月30日までに延長されていますが、特に飲食やホテルなどのサービス業界にとっては大打撃のはずです。

変異ウイルス感染拡大が収束に向かってると言い切れない中で、感染拡大、および医療崩壊の阻止と経済活動を平常時に戻すことを両立させることはとても難しいとは思います。
しかし、明るい話題もあります。
それは、ワクチンの確保状況がかなり進みつつあり、もうしばらくすると接種率がアメリカなどを追い抜くと見込まれ、来年もノババックス、ファイザー、そしてモデルナから合計3億2000万回分を確保していることです。(来年のワクチン確保状況については9月7日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)より)
今年分においても予定通りワクチン接種が進めば、感染者数の減少、および医療崩壊の状況もある程度緩和されると見込まれ、経済の好転も期待出来ます。

いずれにしても、世界的に新型コロナウイルスの感染拡大が収束に向うまでは次々に変異ウイルスが生まれてくるのでその都度対応していかなければなりません。
ちなみに、9月9日(木)付け読売新聞の朝刊記事によれば、最新の変異ウイルス、南米由来の「ミュー株」に対しては、ワクチン接種者の抗体の効果が従来株より7分の1以下に低下したといいます。
ですから、ワクチンや治療薬もより感染力の強い変異ウイルスの登場とともに対応させていかなければなりません。

ということで、少しでも早く「自宅療養という名の放置」の状況から抜け出し、まだまだコロナ禍は続くという前提のもとで感染拡大阻止と経済回復とのバランスの取れる政策が求められるのです。

 
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2021年09月18日
プロジェクト管理と日常生活 No.711 『“投資の神様”が個人投資家の投機に警鐘』
5月3日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で“投資の神様”による個人投資家の投機への警鐘について取り上げていたのでご紹介します。

“投資の神様”と呼ばれるウォーレン・バフェットさん(90歳)は投資会社「バークシャー・ハサウェイ」のCEOを経営しています。
その総資産は960億ドル(10兆円超)といい、アメリカの経済紙「フォーブス」が発表する世界の長者番付で毎年上位に名を連ねています。

そのバフェットさんが5月1日、自身の投資会社の株主総会で、個人投資家によるリスクの高い投機的な株取引に警鐘を鳴らしました。
バフェットさんは、新型コロナウイルスの感染拡大による外出禁止などで若い世代の個人投資家が増えて、初心者がリスクの高い取引に関わっているとして「多くの人がカジノにいる」と指摘しました。
そして一部の銘柄の乱高下につながった株取引アプリ「ロビンフッド」などを例にあげ、「ギャンブルを誘発している」と非難しました。
バフェットさんは次のようにおっしゃっています。
「いつ時計が12時になり、全てがカボチャとネズミに変わるかは誰も教えてくれない。」

“投資の神様”の発言は世界中から注目されていて、例年では総会に数万人が参加しますが、新型コロナウイルスの影響で株主総会を2年連続でオンラインでの開催となりました。
バフェットさんは、長期的に株を保有し、企業の成長を後押しすることで知られていることから、こうした投機的な動きに警鐘を鳴らした格好です。

以上、番組の内容をご紹介してきました。

そもそもバフェットさんのように10兆円を超える資産を持っている人たちの存在が驚きです。
ちなみに、2021年版の世界長者番付(米経済誌フォーブス)によれば、米インターネット通販大手アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)が資産額1770億ドル(約19・5兆円)で4年連続の首位になりました。
また、日本人トップはソフトバンクグループの孫正義会長兼社長が454億ドル(約5兆円)で29位に入っています。

そのバフェットさんは「多くの人がカジノにいる」と指摘し、個人投資家によるリスクの高い投機的な株取引に警鐘を鳴らしています。
本来、株式投資はバフェットさんの考えるように長期的に株を保有し、企業の成長を後押しすることが狙いであるべきだと思います。
一方、投機的な株取引は本質的にギャンブルと同じだと思うのです。

ということで、株式投資を投資資金の損失リスク管理の観点から見れば、将来性の見込まれる企業を対象に長期的な保有を前提に株を購入することが賢明だと思うのです。
そういう意味で、“投資の神様”と言われるバフェットさんはまさに株式投資の王道を行く株式投資家と言えます。

ちなみに、私のとてもささやかな株式投資の経験から言えることは、株式投資用の資金はある程度余裕のある現金や預金が残る範囲で行うべきであるということです。
というのは、手持ちの現金や預金に余裕がなくなると、金銭的に必要に迫られて売るタイミングでない時にも売ることになってしまうからです。
ですから、こうしたことは株式投資における最も基本的なリスク対応策と言えます。

 
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2021年09月17日
アイデアよもやま話 No.5063 食材が固体から液体に変身!
5月17日(月)放送の「あさチャン!」(TBSテレビ)で食材の固体から液体への変身について取り上げていたのでご紹介します。 

カタクチイワシを入れたビニール袋をある装置に入れて、1日経つとドロドロの液体に、続いてザックリカットしたカボチャも液体カボチャに変わります。
この驚きの発明品の商品名はズバリ「まるごとエキス」です。

その仕組みについて、この商品を開発した株式会社東洋高圧(広島市)企画管理部の森川篤史さんは次のようにおっしゃっています。
「“超高圧力”を使って食材を液状に変化させることが出来ます。」

食材を液体にする超高圧のパワーとはどれほどのものなのか、かき氷の容器を使って実験してみると、とても小さくなりました。
超高圧という圧力ですが、地球上でもっとも深いと言われるマリアナ海溝の水深1万メートルの底と同じ圧力をわずか数分でかけることが出来ます。

この「まるごとエキス」、ただ食材を液体にするだけではないのです。
超高圧をかけると発酵と熟成が進んで、食材の旨味もアップするんです。
この技術を活用して高知県の食品製造会社、有限会社スタジオオカムラではバーニャカウダソースを作っています。
使っているのは、地元の特産品、キビナゴです。
スタジオオカムラの蔵田克己さんは次のようにおっしゃっています。
「キビナゴに含まれている成分を本当に余すことなく全て使います。」
「魚の旨味がでますので、味に深みがでる。」

超高圧によってキビナゴが熟成され、素材の旨味が詰まったソースになるといいます。
また、短期間で熟成することが出来るため、通常1年かかる醤油がたった1日で出来るのです。
しかも熟成期間が短いために腐敗を防ぐための塩を必要としません。
ですから塩分を8分の1に抑えた醤油が出来てしまうのです、
更に食品ロスを防ぐ超高圧技術はスゴイのです。
東洋高圧の森川さんは次のようにおっしゃっています。
「これはかたちが不揃いで市場に出回らないレモンになっております。」

かたちが悪く、店頭に出回らない食材も用途が広がります。
こちらの工場では、レモンに塩とこうじを加えた調味料「塩こうじレモン」を開発したり、規格外のニンニクもエキスにして健康補助食品に加工しています。
規格外のものを原料にしていることでコストを抑えられ、低価格で提供出来るといいます。

フードロスにも一役買っている「まるごとエキス」の超高圧、実は食材をドロドロにする以外の利用方法があります。
「まるごとエキス」にかけ、3日経過した生の鯛の切り身、圧力や時間を調整することで食材のかたちを保ったまま鮮度が変わらないほど新鮮です。
その理由は、超高圧の環境では細菌は生きることが出来ないからです。
つまり、超高圧にかければ、火を使わずに殺菌出来て、風味を損なうことなく鮮度を保つことが出来ます。
広島市の老舗日本料理店「喜多丘」でも「まるごとエキス」の殺菌技術を活用していました。
店主の北岡三千男さんは次のようにおっしゃっています。
「これにかけると3日から1週間はきちっともちます。」
「食品ロスが全くないです。」
「すごく僕は重宝してますね。」

今後、この超高圧技術「まるごとエキス」でそのままエキス化した食材は流動食であったり離乳食であったりといったものへの活用も期待されています。

以上、番組の内容をご紹介してきました。

今回ご紹介した超高圧を利用した「まるごとエキス」の特徴を以下にまとめてみました。
・食材を固体から液状に変化させる
・発酵と熟成が進んで、食材の旨味もアップする
・短期間で熟成出来るため、通常1年かかる醤油がたった1日で出来、しかも腐敗を防ぐための塩を必要としない
・規格外で店頭に出回らない食材も用途が広がる
・規格外のものを原料にすることで低価格で提供出来る
・食品ロスを防ぐことが出来る(参照:No.4914 ちょっと一休み その767 『やはり無視出来ない食品ロス!』
・超高圧をかけることにより、火を使わずに殺菌出来て、風味を損なうことなく鮮度を保つことが出来る
・今後、この超高圧技術によりそのままエキス化した食材を流動食や離乳食として活用出来る

こうしてまとめてみると、「まるごとエキス」は私たちの食生活の幅を広げ、一方で食品ロスの削減に貢献出来ると大いに期待出来ます。
ですから、将来的に「まるごとエキス」が現在の電子レンジと同様の大きさ、および価格で市販化されれば、飲食店や一般家庭でとても重宝される存在になると思われます。

 
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2021年09月16日
アイデアよもやま話 No.5062 マスクの着け方次第で効果激減!
新型コロナウイルスの変異株が猛威を振るっている中、今や外出時のマスクの着用はニューノーマルとして定着しています。
そうした中、5月12日(水)放送の「あさチャン!」(TBSテレビ)でマスクの着け方次第で効果が激減すると伝えていたのでご紹介します。

東京都のアンケート結果で、若者の外出理由として3分の1と最も多かったのが「マスクをしているから大丈夫だと思う」という回答でした。
ところが、このマスク、素材や着け方によっては予防効果が激減してしまうということなのです。
わずかな差が大きな差を生んでいました。

こんなケースがあります。
青森市にある不動産会社は窓口にはアクリル板、換気もしたうえで従業員、利用者全員がマスクを着用して営業をしていました。
しかし、従業員と利用者の7人が感染、その家族なども含め、合計で27人が感染するクラスターが発生したのです。
青森市保健所の担当者によると、「エアロゾル感染」が起きた可能性があるということです。
空気中に浮遊するウイルスが口や鼻などに入って起きる「エアロゾル感染」はどのように起きた可能性があるのでしょうか。

検証のため番組スタッフが訪れたのは、聖路加国際大学 公衆衛生大学院です。
布、ウレタン、不織布、防塵マスク、4種類のマスクを用意し、空気中に漂う粒子がどれだけマスクの中に入り込むか検証しました。
布マスクの場合は漏れ率100%、空気中に浮遊している粒子がそのまま全てマスクの中に入ってしまっているということになります。
この漏れ率とは0.3〜0.5マイクロメートルの粒子がマスク内にどれだけ漏れ込んだか、つまりどれだけマスク内に粒子が侵入したかを示す数値のことです。
大西一成准教授は次のようにおっしゃっています。
「接触感染を防ぐという意味では全く意味がないわけではない。」
「ただ、粒子を吸い込んでしまうので、その粒子に感染力があれば感染リスクはグンと高まるということになります。」

不織布マスクでは、漏れ率70.29%で、3割はカット出来ているんですが、7割はマスクの中に入ってきてしまっているという状況です。

しかし、あることをして不織布マスクを再び計測してみると、漏れ率21.72%になりました。
その秘密は、隙間を無くすマスクの着け方にありました。
大西さんは次のようにおっしゃっています。
「まず指を(マスクの)真ん中に当てて半分に折ります。」

マスクのワイヤを鼻の高さに合わせてWのかたちにカーブを付けていきます。
かたちをつけたマスクを手に載せ、顔に合わせて着用した後、髪などが挟まらないように顔を密着させていくのがポイントです。
大西さんは次のようにおっしゃっています。
「顔にしっかり密着してマスクをつけているということは、外の粒子を防ぐとともに、外に放出する、拡散させるのを防ぐことにもつながります。」

従来型でも変異ウイルスでも注意する点は変わらず、マスクと行動で感染を防いでいくことが重要だと話します。
大西は次のようにおっしゃっています。
「人流を止めたりすることが出来ない。」
「そういった中でも、自分の持っているマスクの限界を知って、複数の感染対策を同時にやっていくというのが感染流行下では必要になってくると思いますね。」

なお、マスク侵入率の検証結果を一覧したものは添付の通りです。
布マスクやウレタンマスクの侵入率は100%ですが、これはあくまでもエアロゾル感染の状況を考えた場合です。
例えば、自分が感染しているかもしれない時にまとまった飛沫が飛んでいくかもしれない、これを抑えるための布マスクやウレタンマスクは非常に効果があるといいます。
また(2.5マイクロメートルの大きさの)花粉(粒子)を防ぐことも出来ますから、この結果はコロナウイルスの粒子の大きさの測定ということになります。

以上、番組の内容をご紹介してきました。

番組を通して分かったことを以下にまとめてみました。
・マスク着用の効果は、花粉の粒子やウイルスの大きさ、そしてマスクの種類によるどの大きさのもののマスク内への侵入を防ぐことが出来るかといった関係によって異なる
・また「エアロゾル感染」をどれだけ防けるかはマスク着用の仕方、すなわち顔とマスクの間の隙間をどれだけ少なくするかによって異なる
・従って、防塵マスク以外のマスクで「エアロゾル感染」まで防ぐには限界があり、一方で人流を止めたりすることは出来ないので、自分の持っているマスクの限界を知って、複数の感染対策(“3密”の回避など)を同時に実施することが新型コロナウイルスの感染防止に必要である

なお、ワクチンを接種しても人によって抗体の増え方に違いが生じるという調査結果があります。(参照:アイデアよもやま話 No.5056 ワクチン接種後の「抗体」に差!
そして抗体が増えなければ新型コロナウイルスの感染を防ぐことは出来ないのです。
ですから、ワクチン接種も万能ではないのです。
なので、私たち一人ひとりが新型コロナウイルスに対峙していくには、新型コロナウイルスの感染拡大が終息に近づくまで以下の組み合わせの対策を施すことが求められるのです。
・外出時の正しい方法でのマスク着用
・“3密”(密閉・密集・密接)の回避
・ワクチン接種(2回目以降も必要に応じて)
・定期的な検査(PCR検査や抗体検査など)
・感染時のコロナ治療薬のタイムリーな投与


添付: